-2


 学生食堂でのランチを終えた後のこと、立ち上がろうとした巴子にすぐ隣から声がかけられた。

 

「巴子さん。――アンタ最近あぶなっかしいよ。見ててヒヤヒヤする」

 

 そう注意してきたのは、二つ年下の友人だった。

 こうして話すのは随分と久しぶりだったが、相手の印象はかわっていない。年下なのに少し大人びた、鋭い目つきが印象の女の子だ。


「あぶないことしてるだろ」


 友人は責めるような口調で続けた。けれど、巴子には心当たりがない。――妖精がついてくれるようになってから、人との会話のズレは多くなっているのはたしかだが、それでも責められるいわれはないはずだった。

 

 妖精は巴子よりもずっと上手に物事をこなしてくれるのだ。

 たとえ記憶が抜けている間とはいえ、この子が心配するようなことを『私』がするはずがない。


 だからきっと何かの間違いだと思った。


「えっと、どういうこと?」


 巴子は困惑の表情を浮かべながら、なんとか弁解を試みようと思った。

少しだけ、話すのが億劫だった。


 代わってもらえるなら、代わって欲しいと思うくらいには。

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る