読む手を止めさせないファンタジー

タイトルが気にかかって,とりあえず最初は10話くらい読んでみようかと思った。しかしその10話だけでストーリーに惹き込まれ,結果的に一気に読み通してしまった。

異世界転生ものといえば,何の変哲もない非常に没個性的な男性主人公が,中世ヨーロッパ風の異世界に飛ばされるというストーリーが王道であるかと思われる。

この小説は,異世界やキャラクター設定は当然のように優れている。しかしながら,物語が進むにつれて,主人公の元いた世界のほうがそれ以上に特殊な環境であることに気づかざるを得なくなる。

そもそも,なぜ主人公は異世界に飛ばされることとなったのか――。異世界の住人は「別の世界で死んだ人間を神が勇者として転生させた」と説明するがどうも信頼ができない。

この世界は一体何なのか,本当に異世界の住人は信頼できるのか,はたして主人公は元いた世界に帰還することができるのか――そしてその先にある結末は,見事に計算され尽くされて綺麗にまとめられている。

もっと評価されるべき小説である。

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