遭遇
二人の左手首にキラリと光るブレスレットが装着された。
これはそれぞれ以外に装着することは出来ない、一点ものになっている。
そして二人からこれを奪うのならば、腕を切り落とすしかない。
それでも二人の元へと戻ってくるようにはなっている。
「防犯対策はこれでいいよね」
「それな。後は袖で隠しておけばええやろ」
二人で頷き合って、次の話へと進む。
「それじゃあ街を探さなな」
「それな。日も傾いてきたし、早く移動したいね」
「よし、ここでうちの魔法を使う!」
「どうするの?」
「ちょいまって」
そう言って美命は燕から少し距離をとり、下を向いて少し膝を曲げた。
そんな美命の様子をじっと見ている燕は何をするのかと首を傾げて言われた通りに待つ。
「……っせぇー……のっ!」
掛け声と共に、地面の砂が飛び散り、美命が空へと飛んでった。
グングンと上昇し、小さな粒のようになる美命を下から燕がぽかーんと見上げている。
そうして上空で何やらした美命が重力に従って地面へと落ちてくる。
ボスッと砂煙を立てて、美命は無事地面へと戻ってきた。
「けほっ、ごほっ」
「ぐふっ、げほっ」
立ち上がった砂煙に咽ながらも手でなんとか流し、そうして中心部分に目をむければ、美命が胸の辺りまで地面に突き刺さっていた。
そして地面に腕を置いて、フンフンともがいている。
「……何してるの」
「刺さった! ちょ、出れん!」
頭を振り回すようになんとか上半身を動かしてはいるが、どうもスッポリとはまってしまっているようで出てくることが出来なくなっているらしい。
「……生首にならなくて良かったね」
「そこじゃない! 見てえんと助けてぇ!」
「あ、はい」
燕の助力の元、なんとか地面から出ることの出来た美命は既に肩で息をしている。
「で、街はあった?」
「ん、あった……。あっちが森で、中にちょろっと家は見えたけど、遠い。んでこっちが一番近い」
美命は指で示しながら上空から見えた様子を口にする。
太陽が地球と同じ様に動くとして、
大きな目立つ建物は北と南東に存在していたのも確認がとれた。
しかし、今から街を目指すとして一番近いのが、北の方にある町だったと美命は言う。
「じゃあまずは北の方から行こうか」
「せやな」
そうして二人はてこてこと砂漠を進み始める。
「でも、町についたとしてもお金ないやんなぁ」
「それな。でも金策って何したらいいの?」
「こういう時やったら魔物倒してガッポガポかな?」
「魔物かー……そう都合よく……」
さくさく砂を踏んで進む二人が足を止めた。
そうしてぐるりと周囲を見回し、首を傾げる。
そこへ地震の様に地面が揺れ、二人は慌ててその場を飛び退いた。
「……都合良かったかぁ」
「せやな」
ゴボォッ!と地面から飛び出してきた存在を見上げて二人は口を開けた。
それは見た感じミミズのようだった。
しかしその大きさはとんでもないし、口らしき大きくカパーッと開いた部分には尖った歯も見える。
「ミミズかな?」
「ミミズやろ」
「倒したらお金になる?」
「そこは知らん。でもなると思いたい」
≪SHAGYAAAAAAA!≫
大きなミミズが此方を威嚇するように声を上げた。
ぶつかってくるのは音と空気と砂。
二人は吹き付けるそれらを腕で目元を覆い避ける。
「それじゃあいきますか!」
「りょ!」
二人は意気揚々と、左手首にあるブレスレットを目の前へと掲げた。
ブレスレットは陽の光を反射して、キラリと輝く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます