次へ

村を出た二人の次の目的地は獣人の住む森に近い所にある砦、というやつである。

地球のような詳しい地図がないため、目安としてその砦に向かうと良いとアドバイスを受けたのだ。

村長もその先である、森や獣人のことは知らないので、その砦で情報を得るという面もある。


村までは急いでいたから二人は魔力を使って身体能力を上げていたが、ここからは急がない旅だと景色を堪能しながらまったりのんびりと道らしきものを歩いている。


「自然満載やねぇ」

「それな」

「荷物重くない?」

「うん、そこは大丈夫」


美命は大きなリュックのような麻袋を担ぎ、燕もそこそこの大きさのカバンを肩から下げている。

これはミミズと交換してもらった野宿用具二人分と食糧に着替えなどが入っていた。


「こういう時の定番はアイテムインベントリとかアイテムバックなんだけどなぁ」

「あー。どういう原理?」

「知らん。でも、時空魔法や空間魔法とかでなんとかかんとかしてる話は見たことあるよ」

「ふーん」

「アイテムインベントリあったら楽やったのになー」


美命はなにやらぶちぶちと文句を言い始めたが、燕はそれを横目にふん、と鼻で嗤った。


「お忘れですか。魔力MAX」

「ほやった! いやーん、燕ちゃん素敵ー!」

「とは言ってもあたしが詳しく知らないから出来るかはわかんないけど」

「うちも詳しくないからなー……。この世界にアイテムバックとかはないんかな? あればそれを調べて、とか」

「ま、今は我慢して」

「ほーい」


さくさくと草を踏みながら歩いていると、徐々に砂漠が視界に入ってきた。

どうも砂漠は日々じわじわと拡大しているらしい。

村ではそこまではわからなかったが、砦の人や商人がそう言っていたそうだ。


「地球でも砂漠が広がってるとか言われてたけど、こっちもそうなんやねぇ」

「みたいだね。植林とかはしてないのかな?」

「どうやろう? でも魔法もあるんやで? 何かしら対策とかしてそうなもんやけどなー?」


二人で会話をしながら歩いていれば、何やらもやっとした気配を感じて二人の足が止まる。

きょろりと周囲に目を向けてみれば、気配を感じるのは砂漠からだった。


「何かくるね」

「それな」


その気配に誘われるように、あちらこちらから何かを感じる。

それは敵意というよりは、探るようなものばかりだった。


「木の陰から何かこっち見てるね」

「とりま、この姿でどこまで出来るか試そう」

「あたしは手加減かな……」

「それな! セーブ出来るようにならんと後で困るで!」

「ドッカンドッカンやりたい……」

「セーブ出来るようになって」

「あい」


お互い荷物を背負ったまま、砂漠から向かってくる存在に目を向ける。

サカサカと砂を踏んで向かってくるのは、地球からみたら巨大な蟻と何かの虫だった。


「あれ何? 蟻、と?」

「わかんない」

「ま、全部しばけばいっか」

「それな」


二人に向かってくる虫たちの数は両手の指を超える程で、美命はフン、と鼻を鳴らす。

燕は独り言を呟きつつ、魔力を体内で動かしていく。


「サイズは小さめ、数は多いけど強くもなさげ。問題なし!」


美命は膝を曲げて重心を下げると、一気に虫に向かって加速する。

その加速のまま集まり始めている虫たちを蹴飛ばして回る。


「巻き込まれないように気をつけてね」

「おk」


地球のと比べて巨大とはいえ、精々云十センチ程の虫たちは、美命と燕によってその姿を空中へと躍らせその命を終えることになる。

それでもどれかが仲間を呼んでいるのか、なかなかその数は減らなかった。

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