うわぁ……
『それでは私が説明しよう!』
「うぉっ!?」
「ひゃっ!」
真っ白な空間に突如響いた低い声に、茶髪の女性は文字通り飛び上がり、黒髪の女性もピクリと体を震わせた。
お互いがそれぞれ視線を動かし、揃って正面を向いたその時、真っ白な空間に淡い光が生まれ、大きく膨らみ……人の姿を模っていく。
二人はその様子を目を眇めて見守り、そうしてそこには三人目の姿が現れた。
『はっはっは!』
「……うわぁ……」
「……ないわぁ……」
目の前で胸を張って高らかに笑う第三者の登場に、女性二人の顔が引き攣った。
そこに現れたのは、金髪碧眼の、長身の男だった。
顔立ちは濃いといえるだろう、彫りの深い顔立ちで、太い眉にきりりとした目元、高くすっと通った鼻筋、少し厚みのある唇の美男子ではある。
笑うと白い歯がキラリと光って、爽やかに見えなくもない。
しかし、その姿は何とも言えないものだった。
鍛えに鍛え抜いたであろうその身体はムキムキとあちこちの筋肉を盛り上がらせていて、まるでそれを見せつけるようにポーズを決めている。
そこはまだ二人も許容出来たかもしれない。
しかし、その恰好がいただけない。
真っ白のブーメランパンツと、右の肩近くでブローチで留められたマント姿なのだ。
装備品が、その二つしかない。
そんな筋肉ムキムキの、所謂ガチムチマッチョがキラリと歯を光らせて目の前に現れては、女性二人の表情もわからなくもないだろう。
そう、女性二人はドン引きである。
実際二人して一歩下がった。
『なんだなんだ、どうかしたかい?』
ブーメランパンツ一丁(辛うじてマントはあるが、背中の方でたなびいているだけなので数えない)の男は不思議そうな顔で女性二人を見遣り、首を傾げている。
「あの……どなたでしょうか……」
友人の女性と二人きりの時は方言も出していた茶髪の女性が、逃げ腰で丁寧な口調に変わった。
心の声は『なんやこの変態、近寄ってくんなや』である。
黒髪の女性に至っては視界に入れたくないのか、茶髪の女性に隠れるようにそっと動き、目を逸らしている。
『私が君たちを此処へと喚んだのだ! そう、私が創造神である!』
ガチムチ男は腰に手を当てて胸を反らし、ドヤ顔でそう告げた。
告げられた言葉を聞いた二人は顔を見合わせ、もう一度男の方へと顔を向けた。
そうして苦虫を噛み潰したように、その表情を変える。
「え、普通神ってイケメンとかおじいちゃんが相場じゃないの……?」
「『これ』が神様とか……」
「「濃すぎる…」」
『はははは!』
この大笑いをしている男が真実創造神だと言うのならば、二人の反応や零れた言葉は不敬だろう。
しかし、そんな細かい事は気にしない男らしかった。
笑いを収めた男はしっかりと二人へと顔を向け、一つ頷いた。
『突然このような場所へと喚んだこと、謝罪しよう。しかし君たちには私の手伝いをして欲しいのだ』
「……手伝い?」
「何の?」
黒髪の女性は訝しげに、茶髪の女性は首を傾げて質問をする。
男は満足そうに笑みを深めるとドン、と己の胸を叩いてから勢い良く両手を左右に広げた。
『私の世界を平和へと導いて欲しいのだ』
その言葉に女性二人は顔を見合わせる。
「世界を」
「平和に?」
「え、平和に導くって、どうしたら?」
『そこは君たちなりに、で構わないよ』
「大雑把過ぎる」
「平和ってどう判断するんや?」
「それ以前に世界平和とか興味ないんだけど……」
「わかる。自分が良ければそれでいいやんなぁ」
神をも恐れぬ発言が飛び出していることに二人は気付いていないようだ。
自己申告ではあるが、神が目の前に存在しているという状態を忘れているのだろうか。
多分恰好のインパクトが強すぎて何処かへとすっ飛ばしているのだろう。
しかし、創造神と名乗った男はそんな二人を興味深そうに見守るだけで、何も言わない。
話し合う二人をじっと見つめて、答えが出るのを待っていた。
「でもな、異世界ファンタジーは面白そうやね」
「あー、それはある」
「せやけどもし異世界行けるとして、うちらもういい年やで?」
「こういう時の定番は?」
「……あの、神様。何か能力って頂けるんですか?」
顔を寄せ合って話していたが、二人で男の方へと視線を向けて質問をする。
先程まではぞんざいな発言が飛び出していたくせに、ここで下手に出てくる辺り小狡い。
男はいつの間に、しかも何処から用意したのか白い可愛らしいテーブル席に腰を下ろして、湯気の燻るカップを傾けていた。
女性たちの小狡さは気にならないようだ。
『ん? そうだな……。君たちの希望に添える様に尽力はしよう』
「それじゃあ神様の言う世界を簡単に教えてくれませんか?」
『うむ。それでは教えてあげようではないか!』
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