邪悪な世界を美しい旋律で奏でるパンクなオーケストラ

現在、37話目の段階でのレビューとなります。

この作品、まだ5話目あたりの時から読ませて頂いております。


まず最初にあまりの文章の巧さにただただビックリします。表現や比喩の書き方が心情やその場の風景・情景をよく表しており、構成も含めてとても読みやすくなるように工夫がなされています。



次にその美しい文章とは真逆な世界観。人間の闇の部分、弱さ脆さ汚さ傲慢さ残虐さ。狂人が当たり前に息をしている世の中。みんなが傷付いて、ある人はそれに呑まれたり、またある人はそれに順応していく人達。途中から普通の人達(今のところ)が出てきてくれますが、それがまた何とも狂った日常をリアルに浮かび上がらせています。



最後にストーリーですが、これがまたあるようでないスタイルです。あえていうなら現代版の夏目漱石「こころ」といった感じでしょうか。もちろん破綻してはいません。そこがこの人の器量なのでしょうが、本当にギリギリ「小説」になる所を狙っている感じがします。そこにまた作者の凄さを感じます。



本当に今まで読んだ事がない小説です。感想としては、はっきり言って頭では理解が追いついていません。が、そこがこの作品にハマってしまっている一番の理由です。何故なら感覚では全て知っていると思わされているというか…。とにかくラストまで付き合っていきたいと思わせてくれた作品です。これからも頑張ってください!

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