第5話 罪と罰と男

 その店の名前は「ミカエル」


 二時間で二万五千円、決して安い金額ではないが、いい男が抱ける。

 ホモの館では、二千円で男とやりたい放題。しかし、僕に寄ってくる男は化け物軍団ばかり・・・。


 うんざりだ!!!


 お金をちょっと多めに払えば、いい男がひざまずく・・・。

 僕は金を作っては、その店へ通い続けた。

店員さんとも顔馴染みになり、


 店員「お客さん!今日はいい子いますよ。

どんなタイプがいいですか?」


 ヒデキ「んーどうしようかなぁ・・・」

と考えていると、すかさず

 

 店員「ガッチリタイプはどうですか?」

と、やたらガッチリタイプを勧めてくる。

 この前も同じことを言っていた。

しかしながら、僕はガッチリタイプよりもスレンダーな体が好みであり・・


 ヒデキ「とりあえず、写真見せてもらえます?」


 店員「あーはいはい。今回は新人が入ったんですよ!この子なんてガッチリタイプだし」

と、またガッチリタイプを勧めてくる。


 ヒデキ「いや、自分で決めますから・・」

僕が写真をめくっていると


・・・「ありがとうございました!」


 とお客さんを見送っている男の子に、僕の目は釘付けになった。


 ヒデキ「あっあの人は?」店員に尋ねた。


 店員「あーあの子、貧弱タイプですよ」

そんなことは見りゃ分かる。


 ヒデキ「彼を指名したいんですけど・・」


 店員「いいですけど・・・ちょっと待って下さいね」

と店員は彼を呼びに行った。


 店員「つばさちゃーん、御指名よー」


 真っ黒いスーツにダーク色のネクタイ、ロングヘアーがとても似合っている。

彼を見て僕は、今まで見たことのないカッコよさに感動した。


 翼「こんばんわ、翼です」


 優しい声、甘いマスク、微笑みかけられた瞬間、溶けてしまいそうなくらいの瞳。


 翼はキラキラと光っていた。


 その日から僕は、翼の虜になり毎日通って、翼を指名した。

指名というのは、時間料+15000円の指名料が付く。

 僕は三時間、四時間と、とにかく延長しまくり、帰るときには10万!

 それでも翼と一緒にいたい。

 僕は翼に愛されている・・・そう思うことで僕の心は救われる・・・

 僕の頭の中は、翼でいっばいだった。

 苦しくなる程、翼が愛しい!!

 でも、翼に逢う為にはお金がいる。

こうなったら、やるしかない!

 

 僕は、恐ろしいことを考えていた・・・

とある店の前に立ち、意を決して店の中へ入る。自動ドアが開いたと同時に店員が出てきて、「いらっしゃいませー」


 僕はポケットからおもむろに・・・

履歴書を取り出し

 ヒデキ「ここで働かせて下さい!」

その店員は、翼の店の店員であり、


 店員「はぁー?冗談でしょう?

 あなたを指名するお客さんがどこにいるの?」


 あっさり断られ、翼は別のお客さんの相手をしているからと、またいつものガッチリタイプを勧められた。

結局、言われるがまま、その店で三万使って財布の中はスッカラカン。


 ヒデキ「また、やってしまった」


後悔を背中に背負って店を出た帰り道、誰か僕を呼ぶ声がする。

振り返ってみると・・・

そこには、僕の高校の時の同級生!

和明君こと、カー君だ。


 カー君「やっぱり、斉藤だっ!

        久しぶりー元気だった?」

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