第3話 初キッスは300万
裕士から僕に連絡があったのは、衝撃的な出会いから二週間後のことだった。
裕士「よしこちゃんから話、聞いたよ!実は僕もヒデキくん、小さくて丸っこくて
かわいいなぁーなんて思ってたんだ」
僕は、信じられなかった。
《あんなにかっこいいのに!嘘でしょう!?》
それから…ラッキーな事に、僕は裕士と付き合うことになった。
男の人と付き合うのは初めてで
(無論!女の人とも付き合ったことはないが・・)
いったい、どうしたらいいのか全く分からず。
ただ、ドライブしたり、食事へ行ったりとごく普通の付き合いをした。
そんなある日、裕士がいきなり僕にキスをしてきた。
熱いキスの余韻が消える間もなく…
裕士「ひーちゃん、大好きだよ…でも、もうこれ以上、君とは付き合えないんだ」
ヒデキ「えっ!?なっなんで?」
裕士「俺・・・今、借金取りに追われてて、このままだったらひーちゃんに迷惑がかかるから。もう会うのはよそう」
ショックだった・・・
裕士にキスされて、さらに僕の気持ちはヒートアップしているのに
裕士と別れるなんて・・・考えられない。
ヒデキ「いっ、いくら、借金しているの?」
裕士「五十万くらいかな・・いや、もっと増えてるかもしれない」
ヒデキ「分かった。僕がなんとか都合つけるから、別れるなんて言わないで!!」
僕は、すぐに銀行へ行き、少しの貯金とキャッシングでお金を作って七十万円、裕士に渡した。
それからが僕の悪夢の始まり・・・
裕士は何かと理由をつけては、僕から金をむしり取っていった。
裕士に渡した金は、軽く見積もっても三百万になっていて、1回のキスの代償が三百万とは高すぎる。
それ以降、裕士との連絡はプツリと途絶えた。
僕に残ったのは、利息で膨れ上がっていく借金だけ・・・
その日の朝から翌日の朝方まで、僕は毎日死に物狂いで働いた。
3か月ぶりに休みを取り、よしこちゃんに会いに行った。
裕士のことや借金を作ったこと、事細かく話した。
でも、キャッシングで借入したお金はそれほど現実味のないお金で、僕にとってそれほど大事ではなく、正直に話したらよしこちゃんが何とかしてくれるのかと話した。
僕の思惑通り、よしこちゃんは紹介した自分にも責任があると裕士を探そうとしたが、結局見つからず。
三百万もの借金がそう簡単に返せるわけもない。
もう、働く気力さえも失くしてしまっていた。
でも、男は欲しい。
ヒデキ「誰でもいいから男が欲しい!」
僕は懲りずに、よしこちゃんにまた紹介を頼んだ。
よしこちゃんは、前回の事があるからと断ってきたが、僕はそれでもいいからとよしこちゃんを拝み倒し
よしこ「これで最後だからね」
よしこちゃんは二人目の男、剛を連れて来てくれた。
剛は裕士ほどの美形ではなかったが、ムキムキマンで、いかにも俺が守ってやるといったタイプの男だった。無口ではあったが、一緒に居るだけで僕の傷ついた心は癒された。
いつの間にか剛は、自分のアパートには帰らず、僕の家に転がり込み半同棲生活が始まった。
もちろん、僕の家には母が居る為、母が仕事に行っている留守を見計らって、剛が来るという条件付き。
イチャイチャはするが、エッチは無し・・・。
なんか物足りないような・・・。
でも、初めて経験するこんな生活に、とても満足していた。・・・がそんな日々は長くは続かず、剛は仕事に行くどころか競馬、競輪、麻雀、パチンコとすべてのギャンブルに、はまっていた。
毎日、剛のため僕は金を作るのに必死だった。サラ金にも手を出し、剛に貢いだお金は二百万。このままでは、剛も僕もダメになってしまう。意を決した僕は、
ヒデキ「あのさぁー剛、そろそろ仕事しないと、僕にはもうお金ないけど」
剛「そうか・・・今まで、金出してもらってごめんなっ」
意外な言葉だった。
僕がお金を作って持ってくる・・・
それが剛にとっては、当たり前の生活になっていたから、怒鳴られることを覚悟で切り出してみた返事が優しい言葉だったからだ。
話してみるもんだ、ちょっぴりホッとした。
次の日、剛は・・
「ちょっと仕事みつけてくるからさ」
そう言って家を出て行ったきり、二度と僕の前に現れることはなかった。
彼を必死で探したが、住んでいたアパートはだいぶん前に引き払っており、裕士の時と同じように剛の消息もぷっつりと、途絶えてしまった。僕は、剛の素性を何も知らなかったことに今更ながら、気付いたのである。
でも、一度目覚めてしまった僕の体は、もう誰にも止められない!
三人目のヨーヘイ、
四人目の松元くん・・
色んな男に騙され続け、借金はどんどん膨れ上がって八百万にも達していた。
とりあえず、僕の大切な愛車を売ることにしたのだが、なんせ走行距離が12万キロ超えていて大した金額にはならず、自分ではどうしていいかわからなくなって、よしこちゃんに相談してみることにした。
よしこ「だから、ゆったでしょ!もう男に貢ぐのは、やめなって」
ひでき「・・・・・・」
よしこ「あんたに八百万なんて大金払える訳ないし、自己破産するしかないでしょ」
しかし、よしこちゃんも簡単に言うけど、自己破産するには、弁護士料30万程かかかることを、前に聞いたことがある。
そんなお金、今の僕にとっては非常に難しく・・
男以外のことで無駄なお金は使いたくないというのが僕の本音であって・・・
常に男のためだけに、大金をペラペラと使っていた僕の金銭感覚は完全に麻痺していた。とりあえず、借金のことや自己破産したいと思っている自分の意思を母に話してみると、母は訳を何も聞かずすんなり納得してくれ、すぐに知人親戚に連絡をとってくれた。
けっこう簡単に30万貸してもらえることになったが、現金を手にした瞬間・・
そのお金を自己破産の費用には使わず、またしても別の男に貢いでしまったのだ。おまけに、車を売ってしまった為、移動手段が困難なことに気づき、一万円で安い原付バイクを購入した。
寒い冬で、かなりオンボロではあったが、けっこう乗心地はいい!
バイクもなかなかである。調子に乗って乗り回していた時
《ドーーーーン!!》
その瞬間、僕は宙に浮いていた。
地面に思いっきり叩き付けられ意識が朦朧としている僕に誰か話しかけている。
「大丈夫ですか?」
いったい何が起きたんだ・・・
事故・・運転を誤った車が、僕のバイクに突っ込んできたらしい。
バイクはグチャグチャ、見る影もなかった。
そうなると僕の体は?
寒がりな僕の服装が、随時上10枚、下6枚と普通の人が考えられないくらいの狂ったような厚着。
無論、無傷ではあった。
(多少、打ち身は残ったが)
相手の運転手から、見舞金とバイクの代金13万もらってパッと使ってしまった。
何に使ったのか、まったく覚えていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます