第6話 ブスはポジティブ


 あまりにも突然すぎて、僕は、一瞬言葉を失ってしまった。

 カー君は心配そうに「元気ないね、なんかあったの?」


 ヒデキ「う・・うん、ちょっとね・・

 もしよかったらその辺で一杯飲まない?」と誘ってみた。


 カー君「いいねー久しぶりだし行こうか!」カー君は僕を励ましながら、屋台へ連れて行ってくれた。

 カー君は高校の時の話をしてきたが、僕にとっての高校生活は前にも話した通り、悲惨なもので・・・。その話に花が咲くわけでもなく・・


 カー君「あっ、ごめん・・・

           話変えようか」

 

 なんて僕に気を使ってくれて、カー君は相変わらず優しかった。

 その優しさにつけこんで、

 ヒデキ「カー君もし良かったら、今度の日曜日、温泉にでも行かない?」

いきなり切り出してみた。

 カー君は何のためらいもなく即オッケー。そりゃそうだ、僕の本当の正体を知らないんだから・・・。


 カー君「いいねー!温泉かぁー、

  じゃあ日曜日、朝10時に迎えにいく。前の家は引っ越してないんでしょう?」


 やばい!

僕の家の付近には借金取りがウジョウジョ。僕の帰りを待っているわけであって・・・。


 ヒデキ「引っ越してはないけど、どちらかというと竹中駅がいいかな」


 カー君「わかった!竹中駅ね」

運よくカー君とのデートの約束ができ、気分は最高だった。

 待ちに待ったその日がやってきて、僕は3時間も前から駅に行き、カー君が来るのを待った。9時50分、カー君が来た!

 カー君の車に乗り込み、温泉に向かって出発した。 

 カー君は色々な話をしてくれたが、僕の頭の中はカー君と温泉に入れる!!

裸を思う存分、見れるぞ!

なんて、そんなことばかり考えて話なんて殆ど聞いていない。いつの間にか、目的地の温泉に到着していた。


 カー君「けっこう、いいとこじゃん」

カー君はサッサッと服を脱ぎ湯船に浸り、


 カー君「最高!斉藤も早くおいでよ!」


 ヒデキ「うん、すぐ行く」

そう言いつつ、僕はこっそり、カー君のパンツのニオイを嗅いでいた。

 そして、僕もカー君のそばに行き、肌と肌が触れ合うように、ワザとふざけてみたりもした。


 カー君「そろそろあがって、ビールでも飲もう」


 ヒデキ「えっ!でも車の運転は?」


 カー君「一杯ぐらい、いいじゃん」

火照った体をビールで冷まし、久しぶりにいい気分になった。そんなせいもあり、


僕は・・・ついうっかり・・・


 ヒデキ「カー君のあそこって、結構大きいんだね。触りたくなったよ」なんてストレートな発言をしてしまった。

 

 カー君「そうかなー普通だよ、普通」そう言って僕の目をそらした。

 しまった!まずかったかな?

 気まずい雰囲気が残ったまま、僕たちは車に乗り・・


 ヒデキ「今日はありがとう。楽しかった」

 カー君は笑って頷くだけで、何も言わなかった。

 どれくらいの時間が経っただろか・・・

 もうすぐカー君とはお別れだ。

 たぶん、二度とカー君は僕に逢ってくれないだろう・・何か話さないと。だけど、こんなときって、なかなか言葉が見つからない・・・するとカー君が言いにくそうに

 カー君「あのさ、斉藤くんって・・あっち系?」やっぱりバレてた。


 ヒデキ「隠しててゴメンね」なんて、しおらしいことを言いつつ


 ヒデキ「カー君!一生のお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」


 カー君「なに?」


 ヒデキ「カー君の・・大切なとこ舐めさせて!」


 カー君「冗談でしょう?俺、その気ないよ!マジ勘弁して」


 僕は、泣きながら必死に頼み込み、今までの不幸の数々をカー君に話した。

 それでも、カー君は首を縦に振ってくれず


 ヒデキ「なら、いくら払ったら舐めさせてくれるの!」


 カー君「金?金なんかいるかよ!もう勝手にしろ」カー君は怒った口調で言った。


 でも、怒鳴られようが、僕にはそんなことどうでもい・・カー君の気が変わらないうちに、急いでカー君のズボンのファスナーを下ろし・・ペロペロと舐め始めた。

 カー君のあそこは、結構大きく大変だったがまんざらでもなさそうだ。

 カー君は、僕の中で射精した。もちろん、初めて飲んだけど決して美味しいものではない。

 事が終わり・・カー君がジュースを買ってきてほしいと頼んできた。


 ヒデキ「わかった。買ってくるね」ウキウキ気分で車を降りて、自動販売機の前に立ち小銭を入れると・・・


ブォォォ~


 車のアクセルの音「まっまさか!!」


 振り返ってみると、カー君の車が走り去って行く。僕は山の中に捨てられてしまった。

1時間もの山道を歩いて帰る、という僕に与えられた罰ゲーム。自業自得とは、今の僕にピッタリの言葉だろう。

 何時間もかかってようやく帰りつき、金はないが、体力だけは常に持ち合わせている僕はその足でまた翼の店へ行ってしまった。

 お金がないから店に入れるわけでもなく、翼が出てくるのを店の前で待つことにした。明け方近く、ようやく翼が出てきて


 ヒデキ「つばさー」僕は大声で叫んだ。


 翼「あれーどうしたんですか?

          こんなところで・・」


 ヒデキ「翼に会いたくて、ずっと待ってたんだけど・・財布落としてしまって店に入れなかったもんで」

 もちろん、財布を落としたなんて嘘である。


 翼「なんだ、そうなんだ」素っ気ない返事だった。

 翼「じゃあ、

     僕は始発の電車があるんで・・」


 ヒデキ「えーっ!ちょっとちょっと待ってよ。少し話でもしようよ」


 翼「お客さん、お金ないんでしょう?俺、商売でやってるからプライベートはちょっと困るんですよね」

 金のない奴には用はないと言わんばかりの言い方。


 翼「今度からは、待ち伏せなんてやめて下さいね。お店でならいくらでも相手しますよ」

 そう言って、そそくさと帰っていった。その場にぽつんと残された僕は、改めて自分自身に問いかけた。


 (俺の人生っていったいなんだろう・・) 


 確かに、翼には直接お金を渡したわけではないが、もしかしたら、僕のことを本気で愛してくれてるかも・・なんて勝手に思い込み、翼に逢うためだけに店に通い続け200万も使って、このありさま・・・。

 借金は1000万を超え、残ったものと言えば、街角で配ってたポケットティッシュだけ・・・


 男に貢ぎだして6年と3ヶ月。

僕とまともに付き合ってくれる男はなし!

・・・金もなし!

 

 ヒデキ「そうだ!また、よしこちゃんに頼んで男紹介してもらおうか」


 まだまだ、懲りない僕の人生はもっと大変な事態を引き起こしてしまう!!

 

それはまた今度、お話したいと思います。


最後に・・・この話、主人公の(仮名)斉藤ヒデキ君は実際に存在する人物であり、内容もほぼ事実である。登場人物に関しては多少異なるが・・・。

次回、第2章へ続く。

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