第9話 別れ

 家も取り壊され、行くあてもなくさまよいながら、僕はまた盗みを重ね食い繋ぐ生活へと戻った。

 ヤケクソになってた僕は、何度も店員に見つかり、警察には何度もお世話になった。

 警察に捕まっても身元引き受け人もいない。 

 悪質かつ常習犯ということもあり、とうとう刑務所へ送還されることになった。


《 判決! ヒデキちゃん 

       有罪6ヶ月の実刑とする 》


 ヤッタ――――!

 僕は小さくガッツポーズをした。

 これで、食べるものや雨風は凌げる。


 おまけに、働く場所も提供してくれるのだ。

 刑務所まで、借金取りやよしこちゃんも追いかけてはこない。

 僕はようやく、安堵の場所を見つけた。


《神サマ ありがとう!感謝します!》


 護送バスに揺られ、いざ刑務所へ



 ~それから3ヶ月~


 刑務所生活での僕はというと、

 毎食のご飯は美味しいし、ルームメイトとの仲はGOOD!


 みんなの犯罪歴の話は何より新鮮で楽しかった。

 僕はショボイ万引き常習犯だが、上には上がいる。同室に殺人犯がいるのだ(怖)

 ニュースで見たことのある凶悪犯罪者もいた。街で会ったら、人溜まりもない犯罪者。


 しかし、ここは法で守られた刑務所。


 全然、怖くな――――い。


 犯罪トークで、ヒーロー化されるのはここだけであろう。

 みんな得意気にあれやこれやと、してやったりの自慢話に花を咲かせた。


 僕にとってはどうでもいい話であって、 それより何より

≪夜の相手に僕をどうですか?》

アピールをいつしようかと、タイミングを待っていたが、なかなか切り出せない。


 このままだったら、何もなく出所...  となると、心残りで出るに出れないじゃないのよ―――

 

 うぉ―――――――――――!!!


 あと3ヶ月...


 何とか話を切り出すチャンスを探そう!


―アクション(笑)ー


①無駄にボディータッチ

②くねくね歩き

③プリッとお尻を突き出す

④唇をペロペロしてみる


 誰も天使のキュートなお誘いに乗ってくれやしない。

 

 ルームメイト達は気付いているはずが、

気がつかないふりをしているようにも見えるが...


 ヒデキちゃんの魅力もここまでかなと、思っているうちに、月日が流れて仮出所となってしまった。


   とうとう来てしまった出所日。


 ルームメイトのわたるくん

(犯罪歴 強盗未遂)が

「僕が出所したら、迎えに来てほしい」とこっそり伝えてきた。


 

 ヒデキ「え?いいの?もちろん行く。

            いつ出所する?」


 わたる「来月の25日だから」


と、わたる君の出所日を聞いて、僕はシャバへ戻った。

 出所後は住まいと携帯、少しではあるが刑務所での労働賃金をもらい、就職先まで手配してくれて、刑務所は最後まで面倒をみてくれたおかげで本当に助かった。


(ま、考えてみたら丸裸で出所したところで更生するどころか・・・犯罪を繰り返すことは目に見えている)


 新しい環境の中で、僕はわたる君の帰りを待った。

 そして、待ちに待ったわたる君の出所日。


 刑務所の門の前で、何時間待っただろう。



  ガチャン...

 

 門が開き、警察官が敬礼をしている。


 すぐ隣で深々と頭を下げているわたる君がいた。


 ヒデキ「わたるく―――――ん!!」


 わたる「ヒデキさん!来てくれたんだね」


 僕はわたる君の元へ行き、わたる君に飛びついた。

 わたる君は驚いた様子もなく、僕のことをギュッと抱きしめてくれて、しばらくお互いのぬくもりを感じていた。


 それから...

 僕とわたる君は二人で一生懸命働いて、

新しいアパートを借り、一緒に暮らし始めた。


 刑務所で6か月だったが、同じ環境の中行動を共に過ごし、いつしか愛という名のキズナが芽生え始めていたのであろう。


 ようやく僕は「わたる」という小さな幸せを見つけた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 前略 よしこちゃん


 お元気ですか?

 突然消えたこと、許してください。

 この数年、いろんなことがありました。

 万引きで捕まり、とうとう刑務所に入って出所後も保観付きだった為、 身動きが取れなかったことも含め、何よりよしこちゃんが怖かった(笑)

 

 さぞかし怒りまくっていることでしょう。

 先日、あなたの家に行きました。

 

 電話番号も変えてましたね。

 もう、誰も住んでなかった(安堵)

 

 今の僕は刑務所で知り合った大好きな彼と幸せな日々を過ごしています。

 いつかまた年を重ねて、よしこちゃんに会えることを楽しみにしています。


 この手紙を雷ネズミ小田に託して・・


 また会う日までさようなら・・・

                             ひーちゃんより



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


                      

      「オトコに貢ぐ男」 END


          



~~~~エンディング~~~~


 釈迦堂とんこです。


 私のつがない短編小説を最後まで読んで、

 応援して頂きましてありがとうございました。最低、最悪なその後のひできちゃんですが、今も元気に暮らしていることでしょう。

 

 なぜなら、私のポケモンたちがひできちゃんを遠くから見守っているからです。

 波乱万丈な人生・・・生きている価値もないような男でも、いつか人様のお役に立てたらと、ペンをとりました。


 生きていれば、いつかあなたを導いてくれる人物に出会えることでしょう。

 そこから、もう一度あなたの人生がスタートします。

 そして、何度も何度もやり直せるのです。

 死に急ぐ選択ではなく、生きる選択を。。誰かと考えてみてはいかがですか?

 

 あなたにも釈迦堂とんこのポケモンたちが応援に行きますよ。  

                     さがしてみてください。


                                    かしこ








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オトコに貢ぐ男 釈迦堂とんこ @toncotonco

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