最終章
第8話 ヒデキの歩いた道
夢のようなタコ部屋でのハーレム生活からよしこちゃんの元へ戻り、いや...強制送還され何をするにも気力がなく、心にポッカリ穴が開いてしまったヒデキちゃん。
クルーズトムに会いたい!
マジカルストロングハイも捨てがたく、
ホームシック状態に陥り、僕は何も考えられなくなった。
そのおかげか、ホモの館やミカエルに行く気にさえもれず..真面目な半年を過ごす。
(ヒデキちゃんらしくないよね)
このまま借金に追われ、働いても働いても自由に使えるお金もない。
かわいそうなヒデキちゃん...
(まあ――自業自得ではあるが、そこはナシで テヘッ)
タコ部屋以来、よしこちゃんの追跡は尋常じゃなく、人間版監視カメラが半端ない。
ヒデキの行動をよしこちゃんは、モンスターボールで集めたであろうポケモン達に頼み、その中でもよしこちゃんの雷ネズミ小田は、最強だった。
雷ネズミ小田から逃げ切るには、至難の業。
だいたい、こいつは暇なのか、凄腕の追跡力にどこでそのパワーを使っているのか、と理解に苦しむ。
そんな中...僕の母が突然倒れた。
たまたま、僕が家にいたから発見が早かったと言いたいが倒れている母を見て、
((ババァー何しているんだろう))
と客観的に観察する。
母「うっ―――う―――ん」
うなっている母。
それでも様子を見る。
ちょっと声をかけてみた。
(あらっ 反応がないぞ)
それでもじっ――と様子を見る。
(そうだ!
よしこちゃんにTELしてみよう!!)
ヒデキ「もしもし、うちだけど、ババァー倒れた。どうしたらいいと思う?」
よしこ「えっ?どこで?」
ヒデキ「トイレの前に倒れて動かないんだけど、う—う——って唸ってるから死んではないと思う。ほっといたら治るかな?」
よしこ「お前、バカか!救急車呼べ――!」
(ハイハイ呼びますよーだ!)
受話器を取りピッピ ピ 117…
「プップぴーーーただ今の時刻
午後5時3分…プププぴー…」
(あらっ〜間違えちゃったぁ
時刻聞いてどうするのよ〜
ヒデキちゃんたらおっちょこちょい エヘッ)
(118だった!
プッシュボタンプ〜シュ!! ん??)
「はい、海上保安庁です。
緊急の事件ですか?事故ですか?」
海上保安庁!?だと!!
ヒデキ「あのですね、
母が自宅で倒れてしまいまして…」
「こちらは海上保安庁です。119番にお掛け直し下さい」
惜しい〜 もう一歩だった(笑)
海上保安庁のお兄さんのおかげで、僕はようやく救急車へと辿り着いた ((バカ))
僕の行動が遅すぎてしまい、心労からであろう脳梗塞と診断され、命は助かったものの重度の後遺症が残り、介護が必要だと医者からの説明があった。
母を心配すると言うよりは、これからの生活や経済的なことと、もうこれで母を頼ることは出来ないんだと、そのことで心配する方が大きかった。
《母の介護=僕の自由がなくなる》
それ以後、僕が母に会うことは二度となかった。最悪な奴だと感じるなら、それもそうだ。でも、こんな息子に育てたのは母なのだから。
僕が責められることはない...
そう今でも思っている。
母は入院後、施設に移り、姉たちが面倒をみていたらしい。僕はと言うと、調度いいタイミングで、今住んでいる築60年のあばら屋の、立ち退きの話が出た。
大家さんが言うには、建物も古くなってきたから、解体して駐車場にすると言った理由だ。もちろん、僕が母の代わりに立ち退きのサインをし、立ち退き料としての支度金を50万もらい、家具や荷物もそのままにして家を出た。
よしこちゃんやポケモン達、借金取りも、うんざりだ。
とにかく今は遠くへ遠くへ~
この街から離れることだけを考え、駅に向かい、電車に飛び乗った。
『次から次へと襲いかかる不幸...
その中に少しの幸運
こんな最悪な僕の人生であっても
死のうと思ったことは1度もない。
死ぬ勇気と自殺を考える選択肢が、
なかった。
生きていれば、いつかチャンスがある。
それを逃したとしても、
命尽きるまでには、
またチャンスは訪れる。
僕のチャンスなんて、ホモの館、
ミカエル、よしこちゃん、
タコ部屋ハーレムぐらいで、
大したことはないけど...
でも、僕にとっては、とってもとっても
幸せなことであって、
人それぞれ価値観や受け止め方は
みんな違う。
小さな幸せを見つける為には、
どんな状況であっても、
立ち止まったり、
引きこもったりしていては、
見つけるチャンスはゼロに等しい。
人生は楽天的に考え、生きていくことが、
新しい未来への近道になる』
とカッコいいことを並べ立てているが、
(分かっている?!)
僕に全く説得力はないということを!!
何故なら..過去のことはさておき、僕は立ち退き料50万をどこぞやで落とすという運の悪さ、そして、うろうろ出歩いたことが最大の原因。
NO―――――――!
50万がな――――――――――い!!
どこで落とした?!
みどりのトートバックを何度も確認したが、見つからない!
来た道のりを戻りつつ、僕は探し続け、結局、スタート地点の駅へ戻ってきた。
トホホ。バカバカ!
ヒデキちゃんのバカ―――――!!
もう誰でもいい、僕をコロシテ―――!!
《あ!! 死の選択肢あった(笑) 》
駅のホームでうなだれるように、ぐったりしている僕の周りを出勤前のサラリーマンやOL達が通りすぎて行く。
春なのか秋なのか..頭が真っ白で季節を感じられない、ぬるい朝だった。
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