静かに心をえぐるストーリー

まずこの作品の数話を読んで抱いた印象は、まさに表題に書いたとおり、静かにえぐってくる、というものでした。筆致は抑制されていて、たまにヨゾラ視点になったりもするけれど基本的にはとても客観的な視点で描かれていて、取り乱すことがない。でも中身を読んでいくと、そんな中にバンバン絶望や痛みや苦しみを詰め込んでくる。と同時に、希望も優しさも悦びも同じ筆致で描かれる。この安定した語り部がいるからこそ、作品中の雰囲気がシックでかつ同時にビビッドであり、善意にも悪意にも説得力が芽生え、時には人の命を脅かすような存在にさえ共感させられる、そういった絶妙なバランスが生まれるのだろうと思いました。
使い魔をはじめとした愛すべきキャラも、悪意を持ったキャラも、ストーリーの都合に合わせられるのではなく、個々の意志を以て動いていると納得させられ、より大きな共感に繋がったと思います。とにかく、この作品のタイトルにもなっているヨゾラのキャラクターが楽しい。もう片一方の主人公であるアルルも、普段はクールぶっていつつもまだ未成熟な部分を抱えた人間くささが見え隠れして、この二人(?)の掛け合いと物語を引っ張る力に、ついついページを手繰る手が急かされてしまいます。
これで第一部完とのことですが、これからも彼らの旅は続いていくのでしょう。続きが読める日を楽しみに待っていたいと思います。

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