三国志・中国史ファンの心を砕き続けた世説新語をとてもわかりやすく紹介

「世説新語」という書物がある。

三国志ファンの中でもマニアを自称する人なら多くがそのタイトルを知る書物である。日本語翻訳もされているため、三国志正史の翻訳を読み終わった後に次に読む書物候補に挙げる人も多いだろう。人物エピソード集、小説集と聞けば、読みやすいと普通にそう思うこともあって。

だが、これがかなりの難物である。まず、簡素すぎるぶつ切りのため、背景が注釈を見ても、よく分からない。続けて、目当ての知っている人物がなかなか出てこない。人気のある武将系、参謀系の人物が主役の話はほとんど存在せず、正史で地味な文官と思っていた人物ばかりがでてくる。知らない人物が多く、その人物がどの時代かなかなか分からず、東晋の人物と知ってがっくりする(笑)。中国の古典を前提とした言葉遊びのエピソードが多すぎて面白くない。(教養と言われても、後世から見たら、サブカルのキャラを発言を引用して、うまく合いの手をいれるのと大してレベルは変わらない)

という理由により、翻訳があっても、史実と違うため無理矢理把握する必要もないこともあって、途中で読むのに飽きて断念する人が多いのではないか。かくいう私もそうである。

しかし、史料が少ない三国志や晋代の貴重な題材としてこれはもったいないことである。特に、小説などの書こうと思っている人には世界観が広がるための題材を捨てるのは惜しいことである。

もし、世説新語を時代ごと、人物ごとに分け、平易な文章で翻訳したものがあれば、と考えるところに、ここに実現してくれたのが本作である。

三国志ばかりでなく、今後は両晋時代のものの翻訳してくれるようだ。世説新語を読むことを断念した人もこちらから入れば、頭に入り、世説新語に再度挑戦することも可能なのではないか。

佐藤さんの本領は両晋時代なので簡単には断念はされないだろうと勝手に期待している(笑)

これから読むのが楽しみである。


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