スパークリング城市攻防戦、本編も熱い!読者諸氏のレビューも熱い!

南宋と金のせめぎ合いで最も激しく火花を散らす場所、それが襄陽(じょうよう)。迫りくる金の大軍を迎え撃つは、「砲弾ねえ!兵力ねえ!」のナイナイ尽くしの襄陽を守る「趙家軍」。趙淳をボスに、その義弟でピチピチ威勢のいい趙萬年(金への罵倒がバラエティに富んでて笑える)を主人公とし、息詰まる攻防戦を読者の前に生き生きと展開してみせる。

ベースとなる資料『襄陽守城録』は、すでに作者ご自身が超訳を作られていてカクヨムに掲載されているが、本作でも東洋史の確かな知識に加え、溢れるエネルギーとイマジネーション、一人一人立体的に描かれた人物像が文字通り火薬のごとく炸裂し、土埃がもうもうと上がり、読者をひきつけてやまない。
現場の艱難辛苦をよそにムチャぶり無双の中央政府(いずれの世も同じか…)に怒りつつも、城と人々を守るために奔走する阿萬たちはとても魅力的。(ちなみに私のお気に入りは趙淏=二哥。こういう影のある、鋭利な男前はいいねえ…ということで、彼が登場するとテンションが上がる)
いっぽう、敵である金も、どこか達観したようなラスボス、理想に燃える御曹司、悩める坊ちゃまなど、深みをもって人物が描写されている。


以前、中国風後宮ファンタジーを描いた拙作に作者がレビューを寄せて下さったとき、「私には中華後宮ものを書くのは無理、火薬仕込みの砲弾を投石機でぶっぱなすのしか書けない」と仰っていたが、今度は私のほうから文章の順序を入れ替えてお返しししたい、「私には火薬仕込みの砲弾を投石機でぶっぱなすのは無理、中華後宮ものしか書けない」と。自分の持つ、当該時代に関するなけなしの知識も何もかもうっちゃって、「うーん、凄いなあ、楽しいなあ」と、ただひたすら更新を追い続けている評者である。

勇ましさや喝采だけではなく、理不尽や残酷さへの怒りや涙も余すことなく描く、こんな熱い本編に引き付けられ、読者のみなさんのレビューも熱いがそれも道理、完結まで読む楽しみが続くことの嬉しさを噛みしめている。

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