北方謙三先生に勝るとも劣らない攻城戦記。面白いです。

レビューとしては、登場人物の一人々々が、生まれの出自なり、郷土への愛着であり、親族への想いなり、作品中の行動の裏付けを持っている点を最もアピールすべきなんだろう、と思うわけです。

年甲斐も無く白状しますと、私はアニメファンでして、最初に熱狂したのは「宇宙戦艦ヤマト」でした。正確には、デスラー総統の呟きを聞ける映画版「愛の戦士たち」からです。
次に熱狂したのは「機動戦士ガンダム」。同世代の方には「あ、はんっ」と納得頂けると思いますが、勧善懲悪物には距離を置く人間です。視点を置く陣営は異なれど、敵方が100%悪人だと設定されると、嫌悪感を抱く人間です。
そんな読者からすると、本作品は非常に面白い。

この様に捻くれた読者を納得させるにはキャラ設定で手を抜けません。本作品は見事でした。等身大の登場人物が何かを背負って其々の矜持を持っている。特定の主人公はおらず、魅力的なキャラ達が躍動する群像劇です。

また、戦闘シーンの描写や戦術説明も抜群です。攻城戦の推移が目に浮かびます。宋と金の民族性に拠った戦術の違いを巧く噛み合わせてます。実際の史実だったんでしょうか。私は三国志程度しか知りませんが、時代考証を深く行った上で執筆された作品だと思います。

つまり、自分が其の場にいると錯覚する臨場感を以て、感情移入できる素晴らしい作品です。

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