難攻不落の城を攻め落とせ! 攻城のタクティクス

 現実では悲惨なものとなる籠城戦だが、物語の中ではとにかく浪漫あふれる展開となる。
 
 本作「守城のタクティクス」も、押し寄せる大軍を、少数の精鋭達が迎え撃つ、心躍る物語となっている。

 守る側が主体の話ではあるが、金軍側からの攻城という視点でも見ることが出来る。
 物量では圧倒的優位にあるが、漢人の兵は士気が低いのか、ゲリラ戦になるとすぐに混乱。得意の騎兵戦は、水の上では地の利は得られないようで苦戦中。
 この劣勢をどう挽回していくのかも見物。

 「金」の人々がまた良い。

「撒速」
 冷静沈着。有能であれば敵の将でもスカウト。本気出したら圧倒的絶望感。

「吾也」
 悪人風だが、軍人としては有能。
 子供達には愛情を感じているのか?
 もっと無茶して欲しい。

「多保真」
 当初は脳味噌お花畑だが、戦場の現実を知り変化していく。
 現在の日本にもいそうなタイプ。

「道僧」
 本作の中で、一番悩みを抱えていそう。
 覚醒が待たれる。

 
 敵側の金の人々もしっかりと描写するところがただの痛快娯楽とは一線を画している。
 視点を転換し、攻城の面白さも堪能してみるのも良いかもしれない。



 また、ファンタジーを一応名乗っているが、現実から大きく乖離していないのが良い。
 両軍を通じて、一騎当千の超人的な人間はいない。
 戦闘に疲労し、食事も睡眠もとり、失敗し、後悔し、成長している。
 食料の枯渇の恐怖を予感させる部分もある。
 この先、痛快な展開だけではなさそうだ。


 歴史的事実も元にしているのだから、もう結果は出ているのだけど、この作品の未来は無限に広がっている。


 善と悪などとは一概に決められないこの戦い、両軍どちらにも肩入れし、活躍や喪失に一喜一憂しながら読むのが良いと思われる。



「とりとめのないレビューになりました。とにかく楽しく読ませてもらっていおります。続きも期待しております」
 






 

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