月明かりに照らされた雲海と、にぎやかな鬼娘たち

私は譚という言葉が好きなんです。

おはなしです。物語です。そして奇妙で奇怪で奇異なおはなしと書いて、奇譚。


平々凡々で物事をあまり深く考えていないけど、SNSでなにか大きな話題をさらいたい、ダメな方の現代っ子・田村くん。彼が体験する、一夜の奇妙で奇怪な奇異に満ちたおはなし。

霧深い夜のバス停で出会った、風変わりで方言がかわいい女子高生四人組。

月光の照らす霧の雲海を行く船と、自在に泳ぎ回るこの世のものではない生き物たち。
不可思議な存在、雲鯨。

地方色豊かな人物や土地を交えとある鬼の伝説を下敷きに、カクヨムの奇才・ピクルズジンジャー氏が物語る、まこと奇天烈な出来事。

名付けて雲鯨奇譚。

これを奇譚と言わず、なにを言うのだ。


伝記伝承のなかに登場する「あちら側」の住人は、何気ない暗がりに潜んでいる。怪異は日常の延長線上に、ふとつながりをみせる。

寂れた山のバス停という、怪異とは程遠く思える場所が、夜と霧というとばりが包み込めば間違いなく異質な空間となる。

一歩踏み出せば、もはやそこは人ならざる者たちの世界だ。

のほほんとした田村くんと、勝手に納得して勝手に話しを進めていく方言女子たちが、なし崩し的に日常から離れて行くさまは不穏当なものを孕みドキドキするけれど、ある意味にぎやかで羨ましい。

あと老ノ坂ちゃん、きみは昔も今も酒で失敗してませんかね?

そんな譚です。

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