私は譚という言葉が好きなんです。
おはなしです。物語です。そして奇妙で奇怪で奇異なおはなしと書いて、奇譚。
平々凡々で物事をあまり深く考えていないけど、SNSでなにか大きな話題をさらいたい、ダメな方の現代っ子・田村くん。彼が体験する、一夜の奇妙で奇怪な奇異に満ちたおはなし。
霧深い夜のバス停で出会った、風変わりで方言がかわいい女子高生四人組。
月光の照らす霧の雲海を行く船と、自在に泳ぎ回るこの世のものではない生き物たち。
不可思議な存在、雲鯨。
地方色豊かな人物や土地を交えとある鬼の伝説を下敷きに、カクヨムの奇才・ピクルズジンジャー氏が物語る、まこと奇天烈な出来事。
名付けて雲鯨奇譚。
これを奇譚と言わず、なにを言うのだ。
伝記伝承のなかに登場する「あちら側」の住人は、何気ない暗がりに潜んでいる。怪異は日常の延長線上に、ふとつながりをみせる。
寂れた山のバス停という、怪異とは程遠く思える場所が、夜と霧というとばりが包み込めば間違いなく異質な空間となる。
一歩踏み出せば、もはやそこは人ならざる者たちの世界だ。
のほほんとした田村くんと、勝手に納得して勝手に話しを進めていく方言女子たちが、なし崩し的に日常から離れて行くさまは不穏当なものを孕みドキドキするけれど、ある意味にぎやかで羨ましい。
あと老ノ坂ちゃん、きみは昔も今も酒で失敗してませんかね?
そんな譚です。
自分で和風ファンタジーを書こうとするとどうにも堅苦しくなってしまうので、こうした軽妙さの中に確かな素養を滲ませる作品を拝読するととても羨ましくなります。手触りはふわふわと柔らかですが、どうにもそれだけではない。堅牢な骨組みを悟らせない技巧的な筆致の成せる業ではないかと想像します。軽々とした夢想ならば自由に飛べる、というわけではないことを、僕は嫌と言うほど知っています。
現実をいかに踏み越えて異界へと赴くか――これはファンタジーの書き手にとっては永遠の課題だと思いますが、この作品の見せる跳躍はあまりにも見事です。ごく自然に、それでいて遠くまで、すっと運び去られる感覚。ファンタジーを読む喜びを存分に味わえる瞬間です。
方言を主体とした生き生きとした会話や、可愛らしくも一筋縄ではいかない登場人物たち、異界での驚くべき出来事……娯楽的な読みどころももちろん満載で、頭から終わりまで、豊かな世界にたっぷりと浸ることができます。遊び心と冒険心に満ちた快作です。
語りだしから、
本当にありそうな雰囲気が漂い・・*
恐ろしい気配が伝わります・・*
噂からの始まり、バス亭・・*
好奇心から立てた無謀な計画に。
友人とのやり取り。
SNSの拡散から、
高まる期待やわくわく感と、
待ち受ける、不気味な気配に*
ドキドキが増してゆきます。
大学の友人との会話、
情景から次第に浮かぶ、
バス停の存在。
明るい会話に、肝試しの気持ちが募る、
主人公の気持ちが伝わってきます*
出会う女の子たちの個性的な様子*
この世の物でないとしても、
近所にいるような女子高生のノリが
明るくて驚きます*
不気味な怖さと、存在感ある女の子たち*
会話は楽しくて*
つい世界に誘われそうです*
田村くんが言い出せない気持ちもわかる。
女の子たちが優しくて良かった*
無事に、霧から出られるでしょうか・・*
幻想的な世界でありながら、
楽しいです*