第7話 てんさいの汁

「そうだ、てんさいの汁、あるから飲んで」

 おかんが、学校から帰ってきたばかりのおれに、珍しく積極的に詰め寄ってきた。


 てんさい? 天災? 甜菜って野菜だよね。そんな汁、なにがいいのか。


「いらねーよ。エナジードリンクがいいんだよ」


「そんなものばかり飲んでないで。お願いだから。滅多にないの。たまたま手に入ったんだから。お願い。飲んで」


 それはグラスに半分ほどの、米のとぎ汁を思わせるような薄い白っぽい液体で、見るからにマズそうだった。


「ね、お願い。アインシュタインのが高くてちょっとしか入ってないけど、エジソンはいっぱい入ってるから」


 意味がわからない。


「飲んで、お願い」


「わかったよ」


 しょうがなく飲んでみた。


 汗の味がした。

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