ねこのおやつ
本間舜久(ほんまシュンジ)
第1話 ねこのおやつ
それは奇妙な依頼だった。
ねこのおやつになってくれませんか?
わたしは、自分の時間を切り売りする遊びをしていた。これまでデートの相手役としてのニセ写真撮影のモデルをしたり、パーティーのガヤ(にぎやかし)要員をしたり、週に一度は依頼を請けて二時間ほど楽しんだ。
これは大学生の暇潰しではなく、一応、卒論のフィールドワークのつもりではじめたことだった。
女子なんだから、危険じゃないの、と言われたことはあるものの、都内のオープンな場でしか引き受けないから特に面倒なことはなかった。
でも、この依頼は請けてはいけないような気がした。
ねこのおやつってなんだろう。
その興味ばかりが膨らむ。
返事をしてはいけない。
頭の中に、ねこのおやつになっている自分の姿があった。
それは、ちっとも不快なものではなく、むしろくすぐったいような喜びのあるもので、かといって官能的な感じというほどではなく、とにかくねこたちが楽しんでいるのだ。
そんな夢を見る。
だけど、返事はしない。
新しい依頼が来た。
ねこのおかずになってくれませんか?
少し殺意を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます