不思議な2人の関係

ゲイとレズの二人が一つ屋根の下で過ごすお話。
同性愛者の彼らは、いわば『少数派』。
二人とも、それぞれ思いを寄せている人がいるのだが、気持ちを伝えることができずにいた。

すべてを失うか、もう失っているか――。

彼らの『愛の告白』には、カミングアウトが含まれ、『多数派』が考えもしないような秘密も、同時に打ち明けることになる。
『多数派』は、たとえ失恋しても、「友達から」という選択肢が残る場合がある。
しかし、彼ら『少数派』には、その選択肢も残らない。
失うときは、今までの関係ごと。
『多数派』は、今まで友人だった相手がいきなり自分を『そういう目』で見られていたと思うと、距離をとることがあるからだ。
軽蔑の目でみることがあるからだ。

同居を始めた『少数派』の二人は、互いを恋愛対象としてみていない。

男女の間に友情が成立するか――。

彼らの関係を『友人』と言えるのかは定かではないが、『恋人』なんかじゃないのは確か。
そもそも、こうして何かしらの『属性』に当てはめて、『分別』することがいいことなのかどうなのか……。
私にはわからないが、もし当てはめてみるとするなら、古くからの『親友』という関係が相応しいのかもしれない。
お互いの重大な『秘密』を共有する二人。似た悩みに、ともに悩み続ける彼らは、それはもう歴戦の戦友みたいな。

「好きだ」

その一言が、言えない。甘酸っぱい青春なんかじゃなくて、もっと重たくて、重たくて。



本作を読んでいて感じたのは、人の『体温』。
どの人間も生きていて、悩みを抱えていて。冗談を言って、笑いあって。ドロップキックをお見舞いしたり、投げ技でやり返したり。
町の様子、そこに住む人々がしっかりと、熱を持っていた。

二人を取り囲む、世間の目。
安直に「リアルだ」とは言えないが、実際に二人と同じ悩みを抱える人は、そんな目にさらされているのだろうか……。
ニヤニヤと楽しめる作品なのだけど、ふとした瞬間に心にずしり、と来るものがあった。

いろいろと読者の感情を刺激してくる、素敵な作品でした。
ご一読あれ~( *´艸`)

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