第13話 彼の気持ちを聞きましょう
「どうして、言ってくれなかったの?」
彼女が彼にそう聞くと、
「言えなかったんじゃないのかな?こんな重要なこと。流石にペラペラと打ち明けれないでしょ」
そう先輩が助け舟を出した。
この人がひっちゃかめっちゃか、いきなり物事をかき混ぜている気もするけれど、それはもう皆スルーなんだな、と僕は一人輪の外で思う。
「でも、こんな大事なこと話してくれたって」
彼女は俯きながら、先輩から受け取った紙を見ていた。
「私がこんなことで嫌いになると思ったの?」
涙声が聞こえた。
それに対して先輩が、
「君だけに、というよりも、その周りの人たちに知られるのも怖かったんじゃないのかな?こんなこと知って、態度を変える人は少なくとも居るから」
だからそんなに彼を責めないであげて、と先輩は優しく彼女に伝えた。
それに対して、
「彼の職場の人もそんな人じゃありません。いきなり態度変えるような人じゃないです」
彼女が力一杯否定したら、次の瞬間彼が吠えた。
「君らが勝手にそう思い込んだだけだろう?!」
その瞬間、公園に居た人たち(獣たち?)が、僕たちの方に視線を寄こした。
それを先輩が、ニッコリとした微笑みで、360度周りながら何事かを訴えていったら、すぐさま彼らは各々のことに視線を戻した。
彼女は彼の怒声に、たじろいで震えていた。
それをなんとか痛みが引いて起き上がった僕が、受け止めた。
彼女に対してイラつく気持ちを放ちたくなるのも分かるけれど、ちょっと冷静になれよ、と僕は心の中で彼に向かって少しだけ軽蔑した。
そんな彼に対して先輩が、
「まあ、言わなかったら伝わらないし。知られないしね。君が言いたくなかった知られたくなかった気持ちも分からないわけじゃないんだけれど」
優しく彼に諭してから、
「でも、ちゃんと彼女だけには伝えておくべきだったんじゃないのかな?自分の中だけで隠しておくんじゃなくて」
そう少し真顔で、声もおちゃらけた感じじゃなくて、平坦に淡々と告げた。
その言葉に彼は少しだけ、肩をビクつかせた。
先輩の方に顔をあげた彼の目は泳いでいた。
「彼女にちゃんと説明出来るね?」
先輩がニッコリとそう言うと、彼は1度だけ首を縦に振った。
そして僕が支えている彼女の元に来て、二人は手を取り合って自分たちの自宅へと帰っていった。
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