勇者はロッカーから出没する

第1話 大事な噂



朝、出かけ際にドアに一枚の紙が挟まれていた。



「こんなのあったんだけど」


教室に着くなり、友達にそう話しかけた。

僕は右手の人差し指と中指で、2つ折りにされた白い紙を挟んで見せる。

その紙を見た瞬間に、仲間の一人が、


「ご愁傷様」


といきなり言ってきた。


「なんだよ、それ?」


中身を見ても何のことか分からなかったから、今日一日の話題にはなるかと思って振っただけなのに、そいつは何についてなのか知っている風に、僕に対して気の毒そうな顔を向けた。


「だーかーらー、ご愁傷様って言ってんの」


そいつもそいつで、少し僕に対してイライラしながら、再びそう言った。


「それじゃあ何のことを言っているか、イサミわかんないって」


別の一人がそう助けてくれた。

僕はそいつの言葉に、うんうんと頷いた。

すると、


「イサミって知らねえの?あの噂」


と更に別の一人が口を出した。


「何の噂だよ」


自慢じゃないが、そこそこ情報に疎い方ではない。

教授の誰それが不倫しているだの、ある学部の何年生に実は大物と繋がっている親戚がいるとか、そういうことは知っている。


「まあ、聞くより一回見た方がわかんじゃねえの?」


と突き放された。


「それもそうだな」


と一番初めに口を開いた奴が、ある場所を教えてくれた。


「くれぐれも、俺たちが教えたって言うなよ。そういうキマリなんだから」


と念を押されて。

僕は3人の話す内容が、サッパリ理解出来ずに首を傾げながら、空き時間にある場所に向かった。

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