第10話 彼を見つけ出せ!



先輩がものの5分ほどである計画を立て、それを僕と女の子に告げ、3人で情報を共有してから、女の子を先頭にある場所に向かった。


そこは大きな公園みたいな場所だった。

真ん中に噴水があり、その周りには人がまばらに座ったり遊んだりしていた。

右手には遊具があり、子供たちが元気に遊んでいる。

左手にはカフェがあり、皆思い思いに過ごしていた。


「で、どこらへんなんだい?」


と先輩が女の子に聞く。


「あの少し込み入った生垣の辺りなんです」


と女の子がコソコソと指をさしながら教えてくれた。

遠いから少しよく見えないけれど、確かに生垣が生い茂っていて、ベンチに誰かが腰掛けているのが見える。


「やっぱり居るねえ」


と先輩が言ったから、


「見えるんですか?」


と思わず聞くと、


「僕両目5.0なんだよねえ」


とニッコリと言われた。

5.0ってありえるのかよ?と怪訝な表情をしてしまった僕を見て、


「まあまあ、さっき僕が言った通りに頼むよ、二人とも」


と先輩は意に関せずに言った。

その言葉を合図に、まずは女の子が歩いて行った。

ベンチの方にゆっくりと近づいていく。

その後ろを、女の子とは別の道を辿りながら、僕はついて行った。

向かう場所は同じで、そこまで歩く道は別というだけで。

横目で女の子を確認しながら、怪しまれないように慎重に進む。

ちなみに獣耳がないのがばれたら面倒だから、帽子を女の子から借りていた。

女の子が無事にベンチの傍についた。

ベンチに座っていた人に話しかける。

ベンチに座っていた人は女の子に気がついて、逃げた。

そう、そいつは逃げた。

一目散に。

まさかの行動に僕は一瞬動けなかったが、プランを変更して僕はそいつの後を追った。

女の子はまさかのことに、ベンチの傍から動けないで居た。


「絶対連れ戻してくるから!」


と走り去る時に女の子に言う。

チラリと先輩の方を見ると、先輩も別方向に走りだしていた。

挟み撃ちにするのかな?と思い至る。

先輩はこの町の地図が頭に入っているって言っていたし。

というか、なんで恋人に見つかって逃げ出す奴が居るんだろうか?

と懸命に前の奴の後を追いながらそう思った。

つーか、あいつ依頼人の彼氏なんだよな?別人じゃないよな?とふと不安がよぎる。

しかし、とりあえずは捕まえないと!と思って更に足に力を込めた。

グングンと目の前の奴との距離を縮めていき、


「待てや!!!」


と最後は飛んでタックルをかまして捕まえた。

僕の下でグエッ!と声がしたことを聞き流す。


「モフル君だよね?」


女の子から聞いていた名前を告げると、僕の下敷きになっていた男の子は、小さく「ハイ」と答えたきり黙った。


先輩がいつ到着するだろうかとキョロキョロしていても、一向に気配も感じなかったから、とりあえず僕は男の子を女の子の元に連れ戻した。

道中は静かなものだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る