第11話 なんでも知っているは魔王です
「どうして?」
男の子を見た途端、女の子はそう呟いた。
自分の姿を見て逃げたことに対して、少なくともショックを受けていたらしい。
それもそうだな。
さっきまで、勝手に3人で今日はプロポーズされるぞーなんて、盛り上がっていたんだから。まあ、先輩の勝手なる憶測なんだけれど。
女の子の言葉に、男の子は終始無言だった。
そんな様子に対して、僕は男の子の脇を肘で突いて、
「ちゃんと何か言わないと、このままこじれたまんまになっちゃうよ」
思わず自分の過去の経験談を思い出して、そう助言をする。
というか、ガチであの先輩が帰って来ないことにも苛立ちが募った。
なんであの人どっかいったの?
何しに行ったの?つーか、どこ行ったの?
今ここで修羅場が始まろうとしているのに?
ある意味引き金引いた張本人が居ないってどういうこと?
なんて二人を見ながら、僕が思っていたら、
「ごめんごめん。ちょっと野暮用が入っちゃって!」
と逃げた先輩が、満面の笑みで走ってきた。
息一つ切れずに僕たち3人の元にやってきたから、僕はすかさず
「せんぱーい♪」
と笑いながら、右ストレートを出した。
それを笑顔で先輩に受け止められた。
「だから、ごめんってば」
と言う先輩に対して、
「野暮用ってなんですかあ?」
と僕も笑顔を崩さずに、拳を受け止められたままそう聞く。
なんだかすっごくムカついているから。
「だーかーらー野暮用だってば!」
と笑顔で先輩に僕は投げ飛ばされた。
一回宙を舞ってドシンと地面に叩きつけられる。今日1日で一体何回この人に投げ飛ばされたんだろうと地面と仲良しこよしになってから、一人静かに思った。
そんな僕たちの行動に、不穏な空気が漂っていた二人は、こちらに注目した。
地面に横たわった僕を無視して、
「やっと分かったよ。モフル君」
と先輩は男の子に言った。
その言葉を聞いて、少し怯えたように、
「……何がですか?……」
と彼は吐いた。
そんな彼にお構いもせずに、先輩は近づいていって、
「君はこれを先延ばしにしようとしていたんだろう?」
一枚の紙を彼に突きつけた。
それを見て、彼は一気に青ざめた。
そんな彼の様子もお構いなく、
「君はこれを彼女に知られることを恐れたんだね」
と悪魔の如き声で、彼に畳みかけた。
彼はその場にヘタリと座り込んだ。
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