第7話 何事も役所から始まる


普通に市役所みたいな場所に着いた。


「さあさあ行くよー」


と部長は勝手知ったる我が家の様に、ずいずいと建物の中に入って行った。


「こんにちはー!お久しぶりでーす!」


と部長は軽やかに中に居た人たちに挨拶をした。

そんな部長の声に反応して、職員と思わしき人たちが、次々に部長に挨拶していった。


「うわーゲンキー?」


「久しぶりー!」


「相変わらずだねえー」


「今日はどうしたのー?」


とかなんとか。

見た目女の子からのみに声を掛けらえれていることは、少し流そうと思った。


「町長居るー?」


とある窓口の(やっぱり)うさ耳のお姉さんに部長は尋ねる。


「ちょうど今お茶休憩中よ」


とお姉さんは僕たちを案内してくれた。

コンコンと扉をノックして、


「町長!ホマレさんが着ましたよー」


と声をかける。

その後部屋の中から、「おう!」という野太い声が聞こえた。

ガチャリと丁寧にお姉さんがドアを開けてくれて、僕たちは中に入った。

ドアを開けるなり、真正面に大きな机と椅子に腰かけた町長と呼ばれる狼の耳をした人物が座っていた。


「良く来たなあ。まあ、座りなさい」


と言われて、僕たちは目の前のソファっぽいものに座る。


その後お姉さんがお茶を3つ持ってきた。

中身を見ると、普通にお茶っぽい色に思えたけれど、口をつけるのがためらわれた。

そんな僕の心情を見透かしたかのように、隣で部長がゴクゴクと飲み物を飲み干していった。


「相変わらず、おぬしは遠慮をいうものを知らんなあー」


と町長が部長に対して言うと、


「遠慮って。僕、去年どれだけ頑張ったと思ってんですか」


と部長もヘラヘラと答える。その後に、


「毒なんて入ってないから、美味しいから飲んでみなさい。病みつきになるよ?ここのお茶」


とコソリと部長は僕に向かって言った。

僕は部長の言葉とあまりにも喉が渇いていたのもあって、一口含んでみた。


「美味しい」


甘ったるいのかと思いきや、爽やかなミントの様な感じも受け、かと言って苦いわけでもなくとりあえず美味しかった。

ゴクリゴクリと飲み干していくと、


「美味しかったかい?」


と町長が訪ねてきた。

僕は思いっきり一回首を縦に振って、


「それはもう!」


と答えると、


「あー良かった。彼が美味しいと言っても、どうにも信憑性が持てなくてね」


と町長が豪快に笑った。

ひどいなあーと隣で部長がそう零す。


「このお茶はね、彼が見つけてきたんだ。去年。今ではここの名物になっている」


だから感謝しているんだって。と町長は部長を宥めた。


「まあ、そこまで言うんならいいんですけどー?」


と部長は機嫌をよくした。


「で、彼が今年の?」


と町長が僕の方を指ししめす。

部長は一つ頷いて、


「トドロキ君です。今年の勇者です」


こちらが今日の依頼書と紙を町長に渡した。

それって町長に見せていいんだって思っていたら、町長は机から分厚い本を取り出して、ページを開いて何かと照らし合わせていた。

目が悪いのか老眼なのか、ルーペを目にかけて。


「うん。場所は星影の湖、モミの木3本目の家の子だね。フワルリだよ」


と町長は紙を贈ってきた、依頼書を送ってきた人の家の場所を教えてくれた。

というかなんだその、可愛すぎる番地!とか思っていたら、


「フワルリちゃんかあー。分かったよ、ありがとう!町長」


と部長は勝手に言って席を立った。

慌てて僕も立ち上がる。


「二人で大丈夫かい?」


と声を掛けられて、


「だいじょーぶだよー。つーか、僕がこの町もう把握しているって知っているくせに」


と部長が声を掛けると、


「それもそうだったな。末恐ろしいよ君は」


と肩をすくめて町長はそう答えた。



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