……そんな言葉が思い浮かんだものの、その意味を知るのに十二年は短か過ぎたのかもしません。生に迷い死を選ぶ者が「悪い子」ならば、世にある物語は「悪い子」が生きるために必要なものなのだと思います。だからこそ、「僕」にこそこの物語を読んで欲しいと思いました!
今、流行の異世界転生です。ただし、転生させてくれるのは、女神じゃなく、悪魔です。転生先もファンタジーというか、ダークファンタジーの世界です。スローライフとか、ハーレムとか、一切なく、救いも無いです。罪を背負った者が転生したらどうなるか?ある意味、異世界転生への強烈なアンチテーゼ、かもしれません。日帰りファンタジーの意味を知った時、あなたはきっと絶望する……。
死のうと決めた少年。その動機は、少年の年頃に多くの人が考えることではないでしょうか。ある意味、厨二的な子どもらしさに、苦笑してしまう人も少なくないと思います。わたしもその1人でした。日帰りでファンタジーを経験する物語の多くは、再生と成長の物語です。ネタバレを避けるために、内容に触れませんが、この作品も間違いなく再生と成長の物語です。
(*このレビューは憶測を多分に含みます)ファンタジーな世界観で、強烈なおとぎ話がじわりじわりと紡がれていきます。「未知の世界に放り込まれた」「視界のない主人公」の、感覚と伝聞・推測のみによる語り。その意味では、次に何が起こるのか、まったく予想がつきません。加えて主人公は「『特別』に嫉妬を覚える」「死にたがり」です。『特別』だらけの世界の中で、主人公は何を信じ、何に価値を見出していくのか。衝撃の冒頭から始まり、いい意味で気味の悪さが持続します。この世界観がいいですね。ファンタジーの醍醐味を感じます。
もっと見る