やじるしと、やじるし。

青春の一年間を、そのまま描いたような一作。

甘酸っぱい恋、友人、家族と、主人公を取り巻く人物や環境について、とても自然に、細やかに描かれています。

青春とは、ときに優しく、そして苦しいもの。
その葛藤さえも、愛おしい。


様々な登場人物が向かう方向。それを示すのは、いつも、やじるし。
導かれるように、ときに自分で決断し、彼らは、進んでゆきます。

誰かを想うこと。
それは、やじるしの向く方を、見遥かすこと。

悩むこと。
それは、やじるしの意味を、考えること。

それらが、ときに重なり、交差してゆくのが、人の中で生きるということであり、きっと、彼らは、それをこそ求めているのでしょう。

一人一人のやじるしは、決して、同じものにはならない。
だけど、相手のやじるしがどこに向いているのかを、知ることは出来る。
それが、きっと、優しさ。


あちこちに向けられた彼らの、やじるし。
読み手の「やじるし」は、その行く先へ向く。


後戻りしたって、思う通りにいかなくても、いいじゃん。
きっと、やじるしは、前に向いてる。
読み終えて、なんとなく、そう思えました。

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