わすれてもいいよ、わたしのこと。でも、また、想いだして。

とある夏の日のこと。
日常と連続する非日常。
かつてあったあの夏の、あの夜のこと。そこにたしかにいた、自分とあの子。

不意に越えてはいけない境界線が二人の間に引かれたとしても、それでも、あの夏は、あの夜はたしかにあった。
きつねはなびのように、咲いて、香って。落ちて消えた。


「わすれてもいいよ、わたしのこと。でも、また、想いだして」

振り返るのではなく、いつでもともにありたい。そういう願いを抱ける相手というのは、多分、探しても見つかるようなものではないのでしょう。
もしかして、だからこそ、この物語の主人公は、まだ知らない夏が来るたび、そこに鈴はいやしないかと探してゆくのかもしれません。

美しい文章が夏の夜にしかしないあの香りをも描き出す、エモさ満点の物語でした。ありがとうございます。

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