すでにいない殺し屋。後宮。謀略。それを継ぐ者。
男は、名ばかりが噂される赤橙なる殺し屋を訪ね、主人公のもとへ至る。やり取りの中で赤橙と主人公、そして男の正体が軽妙に明かされてゆく。
そして一挙に立場が逆転し、たじろぐ主人公。
人の噂が人を作るということがある。それから逃げようとする者もまた、噂によって作られた者。
主人公と男は、どこに向かい、何を掴むのだろうか。
そのとき、彼女の手もまた、赤橙色になっているのだろうか。
赤橙というタイトルの通り、どこか哀切と惨さと美しさのある短い物語の中に効果的な展開と人物に焦点を急直下させる仕掛けがちりばめられていて、ぜひ長編で読みたいと思わせる作品です。