概要
彼は海の向こう側から来たひと。私は海のこちら側に住む島の娘。
帝国が戦争で敗北して、島は帝国の支配から解放された。
それからしばらく経ったある頃、島にひとりの青年が流されてくる。
うつくしいひと。おだやかで、やさしいひと。
「わたし」は毎日彼と海を眺めている。
「わたし」は、彼に恋をしている。
※2015年11月発行の創作文芸同人誌『madar』に収録した作品を転載したものです。
それからしばらく経ったある頃、島にひとりの青年が流されてくる。
うつくしいひと。おだやかで、やさしいひと。
「わたし」は毎日彼と海を眺めている。
「わたし」は、彼に恋をしている。
※2015年11月発行の創作文芸同人誌『madar』に収録した作品を転載したものです。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!静かな純愛
『海の向こう側』読了。
ある島に来た海の向こうを見つめる青年に恋する少女とのやりとりのお話。
静かで特別何かが起こるというのではないのに、美しい風景であったり、純粋な思いあったりと、細やかな文章で魅了されました。
丹羽さんの作品すべてで言えるのですが、色使いが素敵。『そこでは、空と海の境が見えた。空には朱や紫の光で染まった雲が流れており、海もまた光を弾いて橙に輝いている』という一文で、作者が描こうとしている世界を一瞬にしてまざまざと見せつけるだけでなく、その中に私を引き込んでしまう。そのパワーのある一文が書けるのがすごいと思います。
真夏の青い空と穏やかな空気と光に包まれた島に対して、(…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ことば、国、そして海
人と人を隔てるもの。それは言葉であり、国や地域という社会であり、そして海という物理的あるいは心理的距離。
同じ砂浜にいながらそれを隔て合う二人を見ることで、人と人との繋がりを見ることができるように思います。
自ら産まれ育った島で、母語ではない帝国語を話す主人公と、自らの故地を思い、母語である帝国語を話す男。
同じ色を見、同じ海を見、同じ鳥を見るはずなのに、二人は隔たれている。
たとえそうであったとしても、それを越えて、一つになろうとすることができる。それは勇気であり、あるいは愛そのものであるのでしょう。
その実態とその行為がもたらす結果がなんであれ、その行いはとても優しく、美しい。
そ…続きを読む