ことば、国、そして海
- ★★★ Excellent!!!
人と人を隔てるもの。それは言葉であり、国や地域という社会であり、そして海という物理的あるいは心理的距離。
同じ砂浜にいながらそれを隔て合う二人を見ることで、人と人との繋がりを見ることができるように思います。
自ら産まれ育った島で、母語ではない帝国語を話す主人公と、自らの故地を思い、母語である帝国語を話す男。
同じ色を見、同じ海を見、同じ鳥を見るはずなのに、二人は隔たれている。
たとえそうであったとしても、それを越えて、一つになろうとすることができる。それは勇気であり、あるいは愛そのものであるのでしょう。
その実態とその行為がもたらす結果がなんであれ、その行いはとても優しく、美しい。
それでも人を縛るものがあるのだということを男の言葉から感じ、国とは、世とは、そして人とはたいへんに切ないものであると感じました。
たいへんに短い物語ではありますが、人というものが深く、そして端的に分かりやすく切り取られており、非常に胸に刺さるものでありました。