第四章『天邪鬼の転機』

(1)

(何であんなことしたんだろ……)

 壊れた祠を横目に、腰掛け石に腰を下ろし、膝の上で頬杖を付いた与依は、半ば呆然と思い返していた。

 あんなこととは他でもない、昨夜のことだ。忌々しい村長の家に行き、起きているかどうかも分からない見ず知らずの薬師の許を訪れた。そして、自分の存在を示して忠告した。

 さっさと出て行かないと、生きてこの村を出られない――

 気が付くと、そう忠告していた。

 馬鹿だと思った。わざわざそんな忠告をせずとも、普通の旅人は一泊もすれば出て行く。

 別に何かしら珍しいものがあるわけではない。ただの村だ。こんなところ、立ち寄ろうとして立ち寄るような村ではない。

 昨夜の薬師のように、次の村まで行くには時間が掛かり物騒だと判断した人間が、たまにふらりと立ち寄るぐらいで、朝ともなればさっさと出て行く。

 今までも、ふらりとやって来て村長宅に世話になり、早朝発っていたらしいのだから、当然のことながら、薬師だってそうするはずだと頭の中では分かっていた。

 だからこそ、与依は思った。

 もう少しいてくれればいいのに――と。

 そう思っていることに驚いた時、与依は思わず頭を振った。

 意味が分からなかった。全く見ず知らずの人間なのに、ただの旅人なのに。

 どうして村にいて欲しいと思ったのか?

 膝を抱きかかえるようにして胸に付け、その上に顎を乗せて、何故か速まる鼓動を聞きながら、与依は薬師のことを思い出していた。

 名前は確か深だった。

 突然林の中から飛び出して来て、子供の与依に謝って来た。

 初めて見た瞬間、与依は一際大きく心の臓が動いたのを覚えている。

 頭の中が一瞬真っ白になって、何を話しかけられているのか分からなかった。

 その内深が、薬箱を下ろして、中身を確かめても良いと言って来たときも、何故確かめなければならないのか分からなかった。

 ただ、深に見入っていた。少し困ったように笑った顔を見て、自分はこの顔を知っていると思った。何故知っていると思ったのかは分からないが、知っていると。

 そうしている間に、『山彦鳥』である縁が、村の場所を訊いて来て、初めて与依は我に返った。

 与依は咄嗟に自分の村へと続く道を教えようとしたが、口は勝手に反対の村へと続く道を教えていた。またやってしまったと与依は思ったが、これはもう、自分ではどうにもならない現象だった。

 いつの頃からこうなってしまったのか分からないが、気が付くと思っていることとは反対のことを口走るようになっていた。

 その気もないのに村人たちを傷つけた。だが、弁解する術が与依にはなかった。

 その内誰もが与依に対して壁を作った。眼が口ほどにものを言っていた。陰口がそこかしこから聞こえて来た。皆が自分のことを嫌っていると感じた与依は、自らも進んで村人たちと関わることをしなくなった。

 ずっとずっと家に閉じこもり、ただじっと過ごして来た。

 毎日毎日、兄のように慕って来た歴が声を掛けに来てくれていたが、今の自分は思ったこととは反対のことをしてしまう。それで歴まで傷つけたくなくて、与依はずっと自分の中に籠もっていた。係わり合いを持とうとは思わなかった。

 たった一人、家の中で膝を抱えて泣いていた。火の消えた囲炉裏の傍で、埃で白くなって来た板を見ながら、与依は外の音を聞いていた。

 子供たちが笑っていた。鬼ごっこでもしているのか、そこかしこで楽しそうな声が上がり、時折誰かが転んで泣いていた。

 どこかで子供を叱る声がしたかと思えば、ご飯の時間を教える母親の声が聞こえた。

 仕事を切り上げて飯にしようと、男衆の声がした。

『与依。ご飯だよ』

『おお、与依。ご飯を持って来てくれたのか』

 誰もいない家の中で、微笑んでいる母親と、おにぎりを持って行ったときの嬉しそうな父親の顔と声を思い出す。

 仕事に出る父親に母親が仕事道具を渡す光景を思い出す。

 行ってらっしゃいと掛けた声に、行って来るよと笑って返してくれた父親の顔を思い出す。

 外の音を聞いて、次から次へと楽しかったことを思い出したなら、与依は寂しさに押し潰されそうになった。涙が溢れて止まらなかった。

 家の中には、もういない両親との思い出が多過ぎたのだ。

 いつまでもいつまでも、その楽しい思い出が続くと思っていた。

 続いてくれるように、村の守り神だと言われている祠にお祈りした。

 ずっと親子三人仲良く暮らせますようにと、何度も何度もお祈りした。

 神様は良い子のお祈りしか聞いてくれないから、良い子にしていなければならないと教えられて来たため、与依はずっと良い子でいた。良い子と呼ばれるように子供ながらに努力して来た。

 でもあの日。町へ出かけた父親の帰りを待っていたあの日。

 いつもと同じように眠って起きたら、母親がいなくなっていた。

 歴の母親と父親は与依に謝るだけだった。

 与依は、謝られるよりも母がどこに行ったのか知りたかった。

 とにかく不安で、早く父親が帰って来てくれないかと、一生懸命心の中でお祈りした。

 そして、一度帰って来た父親は、与依が見たことのないほど怖い顔をして、すぐに歴の家を後にした。

 不安で不安で、涙が止まらなかった。震えも止まらなかった。

 空気がピリピリして痛かった。何が起きているのか分からなかった。

 ただ、怖かった。

 そうしている間に、父親が帰って来た。

 泣きだしてしまうほどに安心したのも束の間、父親は与依の頭を撫でて去って行った。

 もう、神様にお祈りをする必要はないと言い残して。

 意味が分からなかった。どうして自分一人を置いていくのか分からなかった。

 母親の所へ行くと言う事がどういうことなのか、当時の与依は理解することを拒んだ。

 分かったことはただ一つ。大好きだったお父とお母がいなくなったと言うこと。

 あれだけ良い子にして、必死にお祈りして来た願いが、二度と叶えられなくなったと言うこと。つまり、今までのことは全て無駄だったと言うこと――

 その答えに辿り着いたとき、与依は祠の元へ向かっていた。

 気に入らなかったのだ。たとえ神様だろうと何だろうと、自分ではどうしようもないからこそお願いして来たことを叶えてくれなかったことが。

 他の子供たちが悪いことをしても、自分だけはしなかった。

 他の子供たちと一緒に遊びたいと思っても、お手伝いをしなければと頑張った。

 嘘も吐かず、人も騙さず、神様に願いを叶えてもらいたい一心で頑張って来たのに、神様はあえて与依から幸せを奪って行った。

 信じていたものに裏切られた反動は大きかった。

 何もしてくれなかった神様なんていらない――

 与依は祠を壊した。

 村中が大騒ぎになったが、知ったことではなかった。

 与依の心はどす黒いモヤモヤとした感情に支配されていた。

 とにかく憎くて堪らなかった。幸せそうにしている村人たちが気に入らなかった。

 そうしていると、再び祠が建てられた。

 大したこともしないくせに、崇められるなんて何様だ。

 気に入らなくて、再び壊した。

 村長に注意を受けたが、知ったことではなかった。

 その後も、立て直そうとする度に与依は邪魔をした。

 完成までに時間が掛かり、ようやく建てさせた頃に、儀式の最中に壊してやった。

 村長は怒ったが、謝る気などなかった。

 その後ももう一度だけ建て直されて、壊されたなら、村人たちはもう二度と建て直そうとはしなくなっていた。後はただ、残骸が転がっているだけになった。

 良い気味だと思っていた。

 そして、気がつくと与依は、思っていることと逆のことをしか出来なくなっていた。

 だから本当は、深に道を聞かれたときも、左の道は土砂崩れがあって通れないため、右の道を勧めたかったはずなのに、結果的には左の道を教えてしまっていた。

 当然、深にとっては嘘になる。だが、そんなことは深に分かるわけもなく、穏やかな顔を向けてお礼を言われたとき、胸が痛んだ。

 その村に与依も居るのかと訊ねられ、『違う』と言おうとして言葉にならず、結局肯定してしまった。

 ふと胸に、申し訳なさが込み上げて来たが、与依にはどうしようもなかった。

 それなのに、深は一緒に行こうと誘って来た。与依のことを心配してくれたのだ。

 だからこそ、与依は一緒には行けなかった。一緒に行って、嘘がバレてしまったとき、失望されるのを見たくなかったから。

 そのため、咄嗟に与依は壊れた祠を直さなければならないからと嘘を吐いた。

 不思議なもので、嘘を吐こうと思って口を開いたときだけは、素直に嘘を吐けたのだ。

 あれだけ嘘は吐かないと決めていたのに、今となっては嘘だけが素直に吐けるとは皮肉だと思いながら。だが、そこで小さな罰をもらうことになる。

 深は言ったのだ。『酷いことをする者がいる』と。

 これをやったのは自分だと、与依は口にする事が出来なかった。

 反射的に嫌われたくないと思ってしまったのだ。

 今となっては村中からの嫌われものだと言うのに、一期一会でしかない人間に嫌われたくないと思うのは何なのかと、自分でも不思議だったが、それが与依の素直な想いだった。

 だがそれも、時間の問題だということを与依は判っていた。

 道が塞がっていれば、もしかしたら自分の村に来るかもしれないと思っていたから。

 それがまさか、村長たちと共にやって来るとは思わなかった。

 村長は怒り狂っていた。家にいるところを引きずり出され、村の入り口まで連れて来られると、目の前に深がいた。何も言葉に出来なかった。

 罵られて叱られる。軽蔑されて蔑まされる――

 怖かったが、泣き顔を村長たちに見せたくなかった。

 ただそれだけの意地で、与依は泣くのを耐えていた。

 口は次から次へと勝手に言葉を紡いで行く。挙句に、深が嘘を言っているとまで口走ってしまうと、生まれてこのかた感じたこともないほどの後悔に駆られた。

 もうお終いだと思った。自分には取り繕う術がないのだから。

 だからこそ、そんな与依を深が庇ってくれた事が信じられなかった。

 初め与依は、深が何を言っているのか分からなかった。全く意味が分からなかった。

 てっきり罵られると思っていたのに庇われたのだから無理もない。

 怒られることが当然だと言うのに、深は軽く笑みを浮かべながら、自分の勘違いだと村長たちに言って聞かせ、その上、与依のことを解放してほしいと頼んだのだ。

 村の人間だって、与依のことを許して欲しいなどと言ったことはない。ただ一人、歴を除いて。

 歴に関して言えば、小さな頃から兄のように慕って来たため、情もあってのことだろうと考えられるが、見ず知らずの人間が、騙した人間のことを気に掛けてくれるとは思ってもいなかった。

 与依は信じられないものを見るような眼で、深を見ていた。

 拘束されていた手を放されて、だらりと地面に垂れた後も、近付く深をただ見ていた。

 そして、頭に手を乗せられて気遣われたとき、不意に乗っかって来た懐かしい手の重みに、与依は泣きそうになり、思わず手で払い除け、捨て台詞を吐いて逃げ出していた。

 自分の行動がまるで理解出来なかった。何をしたいのかこのときほど分からなくなったことはなかった。嬉しかったのに。泣き出したくなるほど嬉しかったのに、今の自分は素直にその思いを表に出すことが出来ない。

 せっかく与依のことを思ってくれている人間の好意を踏み躙り、捨て台詞を吐いて逃げ出すなど、信じられなかった。

 灯り一つない村の中を走り抜け、家に飛び込み、与依は立ち尽くしたまま大声で泣いた。

 泣かずにはいられなかった。

 それでも直ぐに泣き声を押し殺す。乱暴に涙を拭い、唇を噛み締めて、肩で息を吸い、荒く吐く。止め処なく流れる涙を腹立たしく思いながら、与依は何度も何度も涙を拭った。

 眼の周りがひりひりした。それでも構わず、与依は拭った。

 頭の上に残る深の掌のぬくもりと重みが――、二度と与えられることはないと思っていた感触が、嫌でも大好きだった父親の手を思い出させ、張り詰めていた与依の緊張を切っていた。

 もう慣れたと思っていた独りの状況が堪らなく悲しかった。人恋しくて寂しくて、灯り一つない闇の中、声を掛けて抱き締めてくれる優しい存在も不在の中で、与依は崩れ落ちるように座り込み、やるせない思いを土間へとぶつけた。

 弱弱しいペシリ、ペシリと土間へと叩きつける掌の音が、嫌に大きく鳴り響いた。

 それがまた、より一層与依の孤独を掻き立てた。

 そのまま与依は上がり框に突っ伏して、声を殺して再び泣いた。

 何もかもがいきなり嫌になった。現状が嫌になった。

 嫌で嫌で堪らなくて、嘘しか吐けない自分が嫌で、素直になれない自分がもどかしくて、何もかも、両親がいた昔に戻りたいと切実に願って――

 気がつくと、与依は泣き疲れて眠ってしまっていた。

 ふと眼を覚ましたとき、与依は何も考えていなかった。

 ただボーっと、暗闇を見詰めていた。

 どれだけそうしていたか。

 ふと、謝らなければと思い立った。

 自分ではどうしようもなかったとは言え、与依は見ず知らずの人間に嘘を吐いたのだ。

 挙句、嘘を吐いたのは深の方だと責任転嫁し、それでも庇ってくれた深の心遣いを払い除けてしまったのだから。

 どうせ朝になればいなくなる人間。そんな人間に謝る必要がどこにある? と、思わなくもなかったが、一瞬でも亡き父親のぬくもりを思い出させてくれたお節介な人間に、けじめとして言わなければと思ったのだ。

 これまでも、稀に旅人がやって来る。そうすると、いつも村長宅に泊めることになり、食事でもてなす代わりに、面白い話などを聞かせてもらう。行商人や噺家だったりすると、物珍しいものや魅力的な話を聞かせてもらえることもあり、大変賑わったりする。

 小さい頃、何度か与依もそういうことを体験したが、一度として村を後にする姿を見た事がなかった。どんなに朝早く様子を見に行ったとしても、与依たちが会いに行く頃には既に出発した後だったのだ。小さな頃はよほど急いでいるんだな。と思っただけだったが、よくよく考えてみると不思議なことではある。

 だが、今更そんな、見ていなかったことや、訊ねなかったことを疑問に思ったところでどうにもならない。いつも次の日になれば出発した後なのだから、泊まっている今行けば会うことは出来るだろう。

 与依は当たり前のように考えて、月光が照らす夜道を歩いて村長の家まで行った。

 そして、客間に向かって小石を投げた。なかなか出て来ないので、もう少し大きな石を投げて見た。当たり前と言えば当たり前だが、石は障子を突き抜けて部屋へと転がっていった。

 少しだけマズイと思い、一瞬柵の裏に隠れたりもしたが、直ぐにもう少し大きな石を手に取り、振りかぶってみた。直後、深が現われたなら、本気で心の臓が止まったような気がした。反射的に逃げようとした。

 逃げてどうする?! と、内心で悲鳴をあげたが、足は勝手に走り出そうとして――

 深に呼び止められたお陰で、足が止まった。

 自分で呼び出しておきながら、与依は混乱しまくっていた。頭の中が真っ白で、何を言えば良いのか分からなくなって、謝りに来たんだろ? と自分に言い聞かせたとき、深がそれを察した。

『謝りに来てくれたのか?』と図星を差された瞬間、咄嗟に与依は嘘を吐いていた。

 その後はもうどうにもならなかった。この村から早く出て行かないと、生きたまま出られないなどと、根拠もないことを口走っていた。

 本当はもう少し話をしてみたいと思っていたのに。

 結局不信感を植え付けるようなことだけを口走って、与依は言葉通り逃げ帰った。

 その後はもう、ただただ自己嫌悪に苛まれていた。

 さすがに泣くことはしなかったが、自分の浅はかさとでも言うか、情けなさと言うか、今日と言う日ほど自分に呆れ果てたことはないと思いながら、ばたりと寝床へ突っ伏した。

 そして今、

「……何やってんだろ、おら……」

 昨夜のことを思い出し、与依は深々と溜め息を吐いた。

 しかも、初めて深に出会った場所で。

 別に、ここで待っていれば旅立つ深に会えるかもしれないと思ったからではない。

 むしろ、ここで待っていたところで、深が逆の道へ行ってしまえば、まずこの道を通らない。と言うか、通るわけがないと確信していた。

 この場所にいたのは、単に習慣だったからだ。

 村の中は居心地が悪かった。自分のせいで歴まで悪く言われるかもしれないと思えば、歴の優しさに甘えるわけにもいかない。だからと言って家に閉じ籠っていると、色々と昔のことを思い出すため、到底いられるものではない。

 むしろ、両親を守ってくれなかった、裏切り者の神が住まう祠の残骸の傍にいることで、与依は怒りを補充し、その日一日を過ごせるようなものだった。

 そう。これはただの習慣。朝早く、村の出口で偶然会えたら会えただ。とは思っていたが、昔同様、出て行く旅人と出会うことはなかった。

 いつもはサクサク村を出るところだが、暫く出口をウロウロしていたのも狙ったわけではない。ふと、何となくそうしたかっただけだった。

 だが、結局は誰が来ることもなかったので、与依はおにぎりの包み一つを手に持って、いつも通り祠までやって来た。

 村から離れた小さな祠。今となっては何故、こんなにも村から離れた祠が村の守り神になっているのか全く意味が分からない所だが、父親が『守り神』と言っていたのだからそうなのだろう……と、早朝の静かな道を一人進む。

 朝靄が立ち込める、少し白い世界。朝日に煌く静寂の道を、鳥の声を聞きつつ与依は一人、鬱々としながら歩き続け、すっかり朽ち果て雑草が蔓延り始めた祠の残骸を見下ろして、昔から座り続けて来た腰掛け石に腰を下ろした。

 ここでずっと、何を考えるでもなく一日を過ごすのだ。

 時折薬草などを取りに行くこともある。取って来た薬草は、勝手に歴の家の前に置き去りにして、後は好きなようにさせている。

 だが、その日は違った。与依の頭の中は、どうやっても薬師の深のことばかりが占めていた。初めて会ったときの懐かしさ、何故か知っていると思った理由。

 それを探るためと言い聞かせて、与依はずっと深のことだけを考えていた。

 どれだけ考えても何かを思い出せるわけではない。

 その内、頭に置かれた深の手のぬくもりを思い出し、そっと自分の手を乗せてみた。

「――会いたいな」

 無意識に呟いていた。

 会って少しだけ話をしたいと望んでいた。

 そんなことは無理だと頭では理解しているが、心は強くそれを望んでいた。

 だとしても、それらの望みを与依が意識することはなかった。

 全て無意識の内に行われていたことであり、だからこそ、完全に油断していた。

「与依殿」

 そう呼びかけられたとき、与依は素直に顔を上げ、そして眼に飛び込んで来た人物を眼にした瞬間、言葉通り息が止まった。

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