切り裂きジャックは、あなたの心にも潜んでいるかもしれない

 面白かったです。

 群像劇として、それぞれの人生を描きながらも、潜む闇が最後まで読者を不穏な空気に包みこませます。他の方も書いてらっしゃいましたが、一度読み始めると、晴れだったはずの天気が、曇りになり、霧になり、そして濃霧になり嵐になりと、いつのまにか読者を迷宮の中に連れ込んでしまうのです。その迷宮の先に何が待っているのか、切り裂きジャックは存在しているのかが読み手を楽しませてくれると思います。

 私の認識では、答えはそのまま提示してあるということです。

 読んでいて思ったのは、男性の心理描写が上手いという点。絵を描くのもそうですけど、男性って難しいですよね? 私の中で、女性は心を表に出して、男性は心を裏に隠すという印象があります。だからこそ、歌野さんの作品に登場する男性たちは影があって魅力的なのかもしれません。

 何をもって、切り裂きジャックとするか。誰をもって切り裂きジャックとするか。どこまでを切り裂きジャックとするのか、非常に楽しめた作品でした。感謝。

その他のおすすめレビュー

lablaboさんの他のおすすめレビュー21