これは恋文である。彼の世で待つ愛しい妻へのラブレター――

一言紹介にもあるように、この小説はその全てが亡き妻への恋文と捉えることができます。

おじいちゃんになった今でも、尚、妻に変わらぬ愛情を抱き続けている主人公がとても素敵です。
 
穿った見方をすれば、若い頃に亡くなったことで衝突する余地すらなかったからこそ、当時抱いていた愛情をそのまま1人で育むことができたのかもしれませんが、それでも一人の女性を愛し続けるというのはやはり素敵なんですよね。

彼の世にいる妻はいずれ主人公がきたとき、やっぱりこう言うのではないでしょうか。


「わたしの分まで菜々を愛情いっぱい育ててくれてありがとう」――と。


当たり前でも、それは言わずにはいられないでしょう。
再婚もせずに、ひたすらに一途な気持ちを抱きながら愛娘を立派に育ててくれたのですから――。

素敵な「恋の話」を皆さまも是非。

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