人は利害で動くといったのは、韓非子だったか。
生物は遺伝子の乗り物であり、遺伝子は利己的であると説いたのは、リチャード・ドーキンスか。
だが、利害で動く利己的な存在であるはずの人間の、駄目な部分、無駄な部分をすべて切り落としてゆくと、その神髄は大切な人を思いやる心なのではないかと、本作に於いて作者は語っているようだ。
別の書き手の方が、他の書き手の方に本作を推薦しているのを見て、へえ、どんなもんだろう?と読んでみたのだが、納得した。なるほどこれは、人に勧めたくなる。美しい人の在り方を、清廉な雨と花にたとえて描写する本作を読めば、小説を書くことを知る人にとって決して少なくない衝撃を与えることであろう。
かく言うぼくも、本作を読んで清々しい感動を得ると同時に、「むむむ」と唸らざるを得なかった。
そしてここに、本作をみなに進める次第である。
とても素敵な作品に巡り逢えました!
昭和初期という時代を舞台に、兄、秀一郎と、幼い妹、恵子の成長の物語です。
言葉の表現がとても素敵で、雨の描写、花のスケッチ、2人の想いが、直に伝わってきました。
読みながら映像が浮かんでくるような、表現力の高い作品です。
たくさんの花が出てくるのですが、カラフルな感じではなく、この時代にあったような落ち着いたトーンで全体を包んでいます。
また、4話構成のストーリーは、子から成人して大人へと次第に成長していきますが、外見だけではなく、内面の成長・彼らの想いが、しっかりと描かれています。
とくに後半、3〜4話のストーリーは、胸が締め付けられるような、切ない気持ちになりました。
深く考えられたストーリーで、長編として読みたいと思う素敵な作品です。
おすすめです!
一世紀前の戦争真っ只中、雨を厭う妹に、兄が教えた雨の素晴らしさ。
今の時代よりも世間体が重要とされた時代に、淡い恋心を抱いてしまった兄妹のお話。
タイトルとあらすじから既に惹き付けられ、雨振り頻る情景とともにどこか文章そのものからもしっとりとした質感を感じる……まさしく名作だなと思いました。
紫陽花の花言葉は『辛抱強い愛情』『家族としての結び付き』。まさしく二人の関係そのものです。
『頻り』と降る雨と、兄弟としての『仕切り』。
『止まない』雨と、兄妹の恋心。
そんな思いを込めて下手くそなりに歌ってみました。普段やらないことをやらせてしまうほどに素晴らしかったです。
ぜひ他の方にも読んでいただきたいです。
恐らく、今までカクヨムで読んだ作品の中で一番レベルの高い傑作。
仲の良い兄妹が共に暮らす内に芽生えた至極真っ直ぐな感情。しかしそれは許されない。自分たちでさせ許していない。真っ白で、何よりも透き通った清純恋物語。
まず目を引くのはその文体。これぞ文学と零してしまうほど美しい文字の並びに優しく、そして力強く惹き込まれていきます。
読み進めると、その物語の波が実に緩やかにラストまで運んでくれる。どの物語にもあるはずの『粗』がないのです。
丁寧に、慎重に作り上げられた圧巻の完成度。
読み終わってみると、まるで心の中にこびり付いた灰汁が全ての宙にすくい取られたように透明で、静寂で、清純な気持ちにさせてくれます。
心が洗われるという言葉がありますが、それを体感させてもらいました。
作者様の感情が見えない作品。人によっては悪く聞こえるのかも知れませんが、これは登場人物達が息をしているという評価の最高位です。
彼等が生きる上での幸福や葛藤をすべて見させてもらったかのようなリアリティを感じます。
良いものを読ませて頂きました。本当にありがとうございます。