君想フ銀ノ雨 君慕フ金ノ庭

作者 桜井今日子

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48人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

 6000文字弱の短編にもかかわらず、一冊の長編小説を読み終わった後のような、濃密な余韻を感じてしまった。
 一つ一つの言葉の美しさはもちろんのこと、物語自体がある程度の驚きを伴いつつも決して奇をてらったものではない、ごくごく自然な流れを大切にしているところに、花々が季節の移ろいと共に見せる煌めきと淀みにも似た、生命の営みを感じずにはいられなかった。

★★★ Excellent!!!

 人は利害で動くといったのは、韓非子だったか。
 生物は遺伝子の乗り物であり、遺伝子は利己的であると説いたのは、リチャード・ドーキンスか。
 だが、利害で動く利己的な存在であるはずの人間の、駄目な部分、無駄な部分をすべて切り落としてゆくと、その神髄は大切な人を思いやる心なのではないかと、本作に於いて作者は語っているようだ。

 別の書き手の方が、他の書き手の方に本作を推薦しているのを見て、へえ、どんなもんだろう?と読んでみたのだが、納得した。なるほどこれは、人に勧めたくなる。美しい人の在り方を、清廉な雨と花にたとえて描写する本作を読めば、小説を書くことを知る人にとって決して少なくない衝撃を与えることであろう。

 かく言うぼくも、本作を読んで清々しい感動を得ると同時に、「むむむ」と唸らざるを得なかった。
 そしてここに、本作をみなに進める次第である。

★★★ Excellent!!!

この話を読み始めて、まず文章に引き込まれました。
恵子の視点で描かれるこの物語はとても静かで、それでいて兄である秀一郎に対する強い思いを感じられました。
章を追うごとに進んで行く時間、変わらない想い、変わっていく現実が鮮明に描かれていて切なさを感じさせます。
読み終えた後に切ないながらも温かさを感じる作品です。

★★★ Excellent!!!

 これほど美しい文体はない。題名、副題だけでも言葉のセンスがうかがえるでしょう? これは必読ですよ。

 昭和初期から戦後にかけての時代背景も、この作品を彩る一つの要素であり、切なさを加速させます。
 透明な硝子瓶におさめられた物語。この素晴らしい作品を、ぜひぜひ読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

とても素敵な作品に巡り逢えました!

昭和初期という時代を舞台に、兄、秀一郎と、幼い妹、恵子の成長の物語です。

言葉の表現がとても素敵で、雨の描写、花のスケッチ、2人の想いが、直に伝わってきました。
読みながら映像が浮かんでくるような、表現力の高い作品です。
たくさんの花が出てくるのですが、カラフルな感じではなく、この時代にあったような落ち着いたトーンで全体を包んでいます。

また、4話構成のストーリーは、子から成人して大人へと次第に成長していきますが、外見だけではなく、内面の成長・彼らの想いが、しっかりと描かれています。

とくに後半、3〜4話のストーリーは、胸が締め付けられるような、切ない気持ちになりました。

深く考えられたストーリーで、長編として読みたいと思う素敵な作品です。
おすすめです!

★★★ Excellent!!!

一世紀前の戦争真っ只中、雨を厭う妹に、兄が教えた雨の素晴らしさ。

今の時代よりも世間体が重要とされた時代に、淡い恋心を抱いてしまった兄妹のお話。

タイトルとあらすじから既に惹き付けられ、雨振り頻る情景とともにどこか文章そのものからもしっとりとした質感を感じる……まさしく名作だなと思いました。

紫陽花の花言葉は『辛抱強い愛情』『家族としての結び付き』。まさしく二人の関係そのものです。

『頻り』と降る雨と、兄弟としての『仕切り』。
『止まない』雨と、兄妹の恋心。
そんな思いを込めて下手くそなりに歌ってみました。普段やらないことをやらせてしまうほどに素晴らしかったです。

ぜひ他の方にも読んでいただきたいです。

★★★ Excellent!!!

恐らく、今までカクヨムで読んだ作品の中で一番レベルの高い傑作。



仲の良い兄妹が共に暮らす内に芽生えた至極真っ直ぐな感情。しかしそれは許されない。自分たちでさせ許していない。真っ白で、何よりも透き通った清純恋物語。



まず目を引くのはその文体。これぞ文学と零してしまうほど美しい文字の並びに優しく、そして力強く惹き込まれていきます。

読み進めると、その物語の波が実に緩やかにラストまで運んでくれる。どの物語にもあるはずの『粗』がないのです。
丁寧に、慎重に作り上げられた圧巻の完成度。

読み終わってみると、まるで心の中にこびり付いた灰汁が全ての宙にすくい取られたように透明で、静寂で、清純な気持ちにさせてくれます。
心が洗われるという言葉がありますが、それを体感させてもらいました。

作者様の感情が見えない作品。人によっては悪く聞こえるのかも知れませんが、これは登場人物達が息をしているという評価の最高位です。
彼等が生きる上での幸福や葛藤をすべて見させてもらったかのようなリアリティを感じます。

良いものを読ませて頂きました。本当にありがとうございます。

★★ Very Good!!

水彩画のように、淡く優しげな色合いの雰囲気が素敵な作品でした。
ライラックやガラスを漢字で書かれていたのも、更にストーリーを引き立ていて美しい。
この作品は面白い! というよりも、美しいと表現するのがぴったりです。
是非この美しい作品を、多くの方に見ていただきたいです。

★★★ Excellent!!!

この時代、現代が舞台では表現出来ない、儚さと切なさの奥に見える幸せが描かれている短編です。

最終話で知る事実…知った直後には『何故?』『そんな…』という戸惑いのような混乱のような複雑な気持ちになり、読み進めていくうちに見えるものに、心を揺さぶられるのです。

雨の情景から引き込まれていく儚く美しい物語でした。

★★★ Excellent!!!

タイトルと4つの副題を眺めただけで、ふとため息。
きっと、今日子色の世界に連れて行ってくれる予感でいっぱいになる。

大正から昭和に移り行く、感受性が今より豊かに思える時代。
少し年の離れた兄妹の奥ゆかしさに、歯がゆささえも脆く消える。

お花見が流れたことを悲しむ妹を優しく諭し、雨を擁護する兄。
庭の花々からもらった色水の遊び。その色を想って永遠を重ねる。

硝子のように儚げな兄の佇まい。
たった一度の抱擁に似た距離。心を隠したまま空の人。
巡る時代に、いつまでも想いを馳せて。

★★★ Excellent!!!

昭和初期の時代を彷彿とさせる表現で綴られる、古典的で風雅な物語。
彩りとともに移り変わる季節と年月、優雅な風景描写と雨も溜め息が出るほど美しいのですが、何よりも、兄と妹の奥ゆかしさが、その頃の日本人の持つ心の美しさであり、現代からすると新鮮で眩しく感じられるのです。

人の命の儚い時代だったからこそ、互いの想いが、特に第3章の、会話のない短い文章の一つ一つの中に込められ、想像を掻き立てられました。

登場する花の画像を鑑賞しながら読み返したい、非常に印象に残る作品です。
是非、ご一読を。

★★★ Excellent!!!

昭和初期を題材とした、兄妹の恋愛話がメインです。

兄が病弱なためか、絵に向かい、その姿を見て妹の恵子はゆっくりと惹かれていきます。

女性だからこそ描ける繊細な視点で、描写が文字数が少なくとも読者にその想像を楽しませてくれます。

寂しくとも、決意の詰まった、いい短編です。

是非、ご一読を!

★★★ Excellent!!!

昭和の初め、士族の流れをくむ商家の館の一角で、仲のよい兄妹が、庭に降る春の雨を眺めている。
優しい兄は、あどけない妹を、不意に特別な名で呼んだ。


四章構成の短編小説で、章ごとに数年ずつの時間が流れていきます。
次々と登場する色彩の描写が美しい。

作中の雰囲気と登場人物の人間関係、家族の生き様は、平成の現代には成立しづらい部分もあり、特に絵に長ずる秀一郎の人生には「そんな時代だったのだな」と切なくなります。
字数以上の充実感がある短編でした。

★★ Very Good!!

時代背景や物事の捉え方、価値観などが独特な世界を醸し出しています。
素敵な絵や背景、人物、光景などが見えるような気がしました。

丁寧な表現。切なさ。
人を想う気持ちの強さ。
色々なことを教えてもらいました。

現実ではうまくいかないことが多々あります。
本作もそういったことを表現しているようで、感情移入しやすかったです。

自分の立場を理解し、その通りに演じる。でもその想いは「絵」という形で溢れていて……。

素敵な作品です。

★★★ Excellent!!!

日本人のDNAに100%突き刺さるヒューマンドラマを、妙なる雨音と共に。
昭和一桁から始まる、どこにでもある恋。どこにでもある人生。
なのにここにしかない、優しくて冷たい雨音。
日本人なら心を揺さぶられずにいられない恋の形が、風流と言いますか、雅に繊細に描かれた美しい作品です。

月の光という、雨と対照的な表現が寂しさをさらに膨らませますね。

恋心 雨に緑の 葉を広げ 次なる花に 思いを込める

★★★ Excellent!!!

なんと美しい物語なのでしょう。
背景、登場人物、時代、そして文章。どれもがまばゆい光を、けれども自ら主張しない謙虚な輝きを発しているのです。
短編ゆえストーリーには触れませんが、こんなにも感動をいただける物語があったのですね。
ラストシーンは、知らず涙が頬を伝います。
胸が、心をふるわせるのです。
静かな雨、日本語(ここが肝心)で書かれた花々、色、それらがこの物語を奥ゆかしく盛り立ててくれます。

★★★ Excellent!!!

全編通して、美しい言葉と色で彩られた文章。
それだけでも充分素晴らしいけれど、そこに切ない恋心が雨模様と共に絡み合い、世界に引き込まれます。

時代背景も物語に合っていて素敵です。

そして……最後に明かされる事実。
読み終えた後、美しい純愛にため息を漏らすこと間違いなしです!

★★★ Excellent!!!

ある物やある事象は同じに見えて実は違います――実際に目で見ているビジョンと、心で見ているそれとが異なるから。言い換えれば「自分にしか見えないもの」があります。

彼女にとっての雨もそう――自分だけに降り注いでいるもの。
「あの人」が優しい言葉と穏やかな笑みをくれる瞬間だったりします。

恵――あのとき、彼が名前から「子」の字をとったのは、半ば無意識のうちに、彼女を「女」として意識したのかもしれませんね。

★★★ Excellent!!!

読み終えた後、涙を抑えることができませんでした。
どこまでも清らかな愛、という、そのかなしさに。

優しい兄、秀一郎と、純真な妹、恵子。
深い絆を結び合う二人は、成長とともにそれぞれの心の形を少しずつ変えていき——。

妹への、兄の思いの深さと、清らかさ。
兄を慕う妹の、溢れそうな思い。

そして、それぞれの思いが行き着く、この上なく美しい結末——。

本当に人を愛するとは、こういうこと——。
そして、その痛みが静かに心の奥深くまで染み込んでくる、限りなく美しい物語です。

★★★ Excellent!!!

彼だけが恵子の事をめぐみと呼んだ。
花に降り注ぐ恵みの雨のように、僕たちにとって恵のような人だから。

優しい雰囲気と、色鮮やかな花々の情景とともに、主人公の彼への揺れ動く心が細やかに表現されている。抱くはずのない気持ちを抱いて、彼女は戸惑い、迷い、そしていつのまにかそれを受け入れていたのかもしれない。もし何かが数センチでもずれていたら……というもどかしさを感じてさらに切なくなりました。

ラストは、花々や木々に降り注ぐ恵みの雨のように優しく美しい余韻が残ります。