身構えなくても大丈夫です。気を楽にして本作の世界を覗きましょう

本作を最後まで読み終えた後、しばらく放心していました。

キャッチコピーの放課後幻想小説。
まさに終始自分を見失いそうな感覚を覚えながら読み進みました。

登場する文芸部はオタサーの条件を満たしつつも、どこか自分の中のテンプレのそれとは違和感を感じさせます。
また登場してくる演劇部、犬、教師。どれをとっても自分の世界と乖離した雰囲気を纏っており、霧の中で前後不覚に陥ります。
ふわふわとした自分を安定させようと主人公の青柳に縋ってみるものの、要所々でその手に掴んだ袖を掴み損ねてしまいます。

そして糸目の少女の語りが、本作に漂う幻想感を益々増幅させ、気がつくと自分が今どこを何のために歩いているのかさえも煙に巻かれていくようでした。

中国の『任氏伝』という伝奇小説が下地ということですが、みごと摩訶不思議な空間に迷い込んでしまいました。
頼りない足取りとなりながらも物語を後ろから見続けると、現実的なラストに連れて行かれます。

本作の空気と雰囲気に身を任せながら読んで欲しい一作です。
まさに狐に化かされた気分になります。

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