だれでも夢中になってしまう童話のような世界。
それを舞台に、中学生の心と体、感性と成長を繊細に描いた可愛い物語です。
優しい文体と、心に染みるストーリー、そしてなにより、細やかな遊び心がふんだんに盛り込まれたエンタテインメント。
全てが完成された楽しい短編です。
いやはや、冒頭の『群』からずーっとにやにやしっぱなしで頬の筋肉が痛いことw
そしてタイトルのずば抜けたセンスやシーン一つ一つの発想に脱帽です。
アイスの件、なかなか思いつくことできないですよ!
素敵な作品をありがとうございました。
今夜は幸せな気分で眠れそうです!
……布団がびしょびしょになりそうでちょびっと心配ですがw
てるてるドラゴン、空の上
「空を飛ぶ」ではなくて「空の上」とされたタイトルセンスに脱帽。
これによってドラゴンが自分の影響下ではなく、手を離れた存在として強く感じられました。
鳥子ちゃんの前に現れた非日常の龍は、彼女の日常での願望や不満を解消させます。
作中の鳥子ちゃんと陽介くんが水の中で龍と遊ぶシーンでは、思春期の中学生の「何かが特別な明日」への憧れと、広がる視野による現実への不安が入り混じった複雑な気持ちが非常によく伝わってきました。
繊細な中学生達が描く、晴れのち雨、ところにより一時ドラゴンの空模様を楽しめる作品です。
「てるてるドラゴン、空の上」 ……うーん。やっぱ良いタイトル。
『明日起こるかもしれない「if」の物語』にぴったりな、幻想と現実が瑞々しく同居する素敵なお話です。
予測のつかない展開ばかりで、何が起こるのかという期待に胸を高鳴らせながら、作者様の類い稀なる感性に身を委ねる感覚が心地よくて、最初から最後までわくわく、そしてうっとりと物語の世界に酔いしれることができました。
青春の輝きをより特別なものにしてくれる雨の描かれ方が、とても美しいのです。
15センチというお題の使い方も、すごく面白かったです。15センチという言葉が出てくるたび、思わず口元が緩んでしまうほど心を鷲掴みにされました。
15センチだからって、まさかそれをアレにしてしまうとはッ!という衝撃と笑いと愛着を、ぜひ皆様も味わっていただきたいです。
てるてる坊主と龍。
どちらも雨と呪術的な関わりのあるこの二つをモチーフに、本作もまた不思議な魅力ある雰囲気を漂わせています。
主人公の「僕」による一人称の文体は中学生感バリバリ。なんだか気恥ずかしくもなりますが、一番おもしろいことが起きそうな年代の気分に浸れます。そんな彼に訪れたのは龍の十五センチ。その名は体長十五センチだからで、てるてる坊主が化したものです。その作者のヒロインとクラスのみんなには秘密で飼いはじめる、と言う筋書きです。
本作で注目すべきは主人公とヒロインの会話です。率直で瑞々しさに溢れていて、読んでていい気分です。まるで自分の少年時代のようで……いや全然違う。当時女の子と話した記憶無いわ俺。そして、そんな人でも大丈夫なように本作は知らないものを想像したくなる魅力に溢れています。ヒロインの鳥子は何を考えているのかな、主人公はどう思ってこの日々を過ごしているんだろう……。決して文章でふざけたりキャラクターに無理のあることをさせたりしないことで強靱な現実の基礎が成立し、その上に龍や少年少女の初々しい交流がなされているのです。我々はこのお話に龍が居るのを不思議がるように女の子の気持ちや青春の時間の意味を想像できる、それはこのお話から、十五センチのちっぽけな龍から。
是非とも読んでほしい一作です!
もしもてるてるぼうずが龍になっちゃったら!?
そんなファンタジーな『もしも』から始まる物語。
ファンタジーなはずなのに、なんだかすごく身近に感じたのは、
陽介くんと鳥子ちゃんの、
中学生ならではの距離感とか、空気感とか、そういうものが
とっても巧妙に詰め込まれていたからだと思います。
ネタバレになってしまうので詳しくはかけませんが、
きっと生みの親である鳥子ちゃんに似たのでしょう、
十五センチの生態が微笑ましくってとっても可愛いです!
まさにifのストーリー。
さよならは言わなくていいんです。
また突然の雨のように、物語は降ってくるものですから……。
そんなふうに思える爽やかなラストも、よかったです。