十五センチから膨れ上がる想像力

てるてる坊主と龍。
どちらも雨と呪術的な関わりのあるこの二つをモチーフに、本作もまた不思議な魅力ある雰囲気を漂わせています。

主人公の「僕」による一人称の文体は中学生感バリバリ。なんだか気恥ずかしくもなりますが、一番おもしろいことが起きそうな年代の気分に浸れます。そんな彼に訪れたのは龍の十五センチ。その名は体長十五センチだからで、てるてる坊主が化したものです。その作者のヒロインとクラスのみんなには秘密で飼いはじめる、と言う筋書きです。

本作で注目すべきは主人公とヒロインの会話です。率直で瑞々しさに溢れていて、読んでていい気分です。まるで自分の少年時代のようで……いや全然違う。当時女の子と話した記憶無いわ俺。そして、そんな人でも大丈夫なように本作は知らないものを想像したくなる魅力に溢れています。ヒロインの鳥子は何を考えているのかな、主人公はどう思ってこの日々を過ごしているんだろう……。決して文章でふざけたりキャラクターに無理のあることをさせたりしないことで強靱な現実の基礎が成立し、その上に龍や少年少女の初々しい交流がなされているのです。我々はこのお話に龍が居るのを不思議がるように女の子の気持ちや青春の時間の意味を想像できる、それはこのお話から、十五センチのちっぽけな龍から。

是非とも読んでほしい一作です!

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