雨の日に彼の家を飛び出したヒロイン。
彼女の行き先は、『天気雨』そこはハーブが咲く庭のある小さなホテル。彼には内緒で……。
そこで、不思議な青年、星也と出会う。そして、雨の日生まれの自分の心と素直に向き合っていく。
その光景に流れる雨音が、時にせつなく、時に優しい……。時間だけがゆっくりと流れていく。だからこそ、たいせつにしている想いが募っていく。
タイトルも素敵だし……。少なくとも、わたしは、この物語のラストシーンに憧れた。
雨が、厭うモノではなく癒すモノだと思えてくる、素敵な恋愛小説は如何でしょう。
愛する男性と、心がすれ違ったと思った瞬間。
言葉を持たないはずの雨が心を癒し——孤独の中にいた主人公と、きらめくような人や物とを結びつける。
主人公を待っていたのは、色とりどりにきらめくハーブティー、ドロップたち。そして、優しい雨のように彼女を包み込む、天使のように美しく、悲しげな青年。
現実ではないかのような透明感に満ちた、静かな時間。
そんな宝物のような出会いに、彼女の心は少しずつ柔らかさを取り戻す。
そして——。
ひとを愛する思いは、ひとりひとり違う。そんな、それぞれの心の形が、愛おしむように優しく描かれます。
愛することの悲しみや切なさ、喜び。様々な感情を丁寧に織り込んだ、宝石のようにきらめく物語です。
しとしとと降る雨と涙の冷たさ、心細さ、寂しさが伝わってくる。
どこか抽象的でありながら、揺れ動く心の描写はひどくリアルだ。
彼の些細な言葉が、甘えが、わがままが不意に悲しくなって、
彼女は誕生日間近の週末にただ一人、高原のホテルを訪れた。
彼女を迎えたのは、天使のように美しく不思議な青年と、
彼が育てるハーブの香り、彼が手渡してくれる透明な滴と雫。
詩的な言葉遣いが織り成す世界観は独特であり、繊細であり、
淡くにじんでいるようで、まるで水彩画みたいだと感じた。
雨の滴りとともに語られる恋の話。
優しい切なさを求める人に、ぜひ。