器用貧乏の大学生・伊佐美渓が、ひょんなことから寂れた商店街の地域活性化にのめり込み、そして巣立っていくまでの物語。
共感しやすい等身大のキャラクターと、身近な問題を扱った分かりやすいストーリーで非常に感情移入しやすいストーリーになっています!
個人的な見どころは商店街の賑やかなキャラクターたち、基本ツンデレで構成されたおじさんやじーさんたちに萌えます。ヒロインもじーさんと同じくツンデレです。随所にリーダビリティを発揮させるための謎や伏線も仕込まれていて、なかでも作中に登場する『居座り烏』と呼ばれるバンドの正体は見どころの一つです。果たして、わかった人はいるのだろうか?
自分には何も取り得がないと思っている方に読んでもらいたらい、自分の居場所を見つけたくなる物語です!!
大学が地域活性化のために奔走するお話。
フリーペーパーを作ったり店舗で起業したりと、他の方が書いている働くヒトコンテストとは少し色味が違っていて、だからこそ青春の眩しさが大きな特徴になっています。
実際に会った事がなくても「いるいる」と思わせる商店街の面々が秀逸。
三人称視点で彼らの心の動きが見え、徐々に一丸となって町おこしをしていく様子は見ていて気持ちが良いですね。
とはいえ、学生が「活性化」と謳ったところですぐに受け入れるはずもなく、そのあたりの葛藤や折衝がリアルに描かれています。
ほのかな色恋、部活仲間とのチームワーク、将来への悩み。
様々な青春の欠片が散らばるこの作品、「あの頃」を思い出したい方へオススメです。
最終話まで読了しました!
タイトルの通り、まさに若者達の試行と失敗、そして情熱の物語です。とはいえ、本作は若者達を主軸に据えつつも、彼らを囲む様々な大人達の立ち位置も見事。真っ直ぐで背負うものが少ない若者達に比べ、すでに多くの経験を積み、背負うものが大きくなっている大人達の対比と、それぞれの主義主張がとてもわかりやすく描かれていたと思います。
魅力的なキャラクターによって彩られる、商店街再生――ひいては、人と人との触れ合いの再生物語。
本作を読了した後、彼らが蘇らせたのは、街そのものであると同時に、人同士の触れ合いだったのではないかと気づき、とても熱いものを感じずにはいられませんでした。
お美事です。
転勤族故に、故郷や居場所の概念が薄かった伊佐見渓。
そんな彼は最初は腐っていた。それは奇しくも住んでいる古巣市――うずら通り商店街の寂しさと同じようで、どこか暗い物になっていた。
しかし彼は、商店街は変わった。商店街の活気を取り戻そうとするマチカツ部、地域の人々、そして彼らの絆。彼らのしてきた事は、ラストで大きな意味となって帰ってくる。
商店街の未来が輝かしい物になったと同時に、その場所が渓にとっての『居場所』になった。だからこそラストの台詞が重く感じられる。
これ程熱く、切なく、そして輝いている物語を色んな人に知ってもらいたい。そんな想いをしてくれる、素敵な物語です。
大学に通うためだけに、この街にきた主人公。
その彼は、ちょっとしたきっかけで、そこのシャッター街になりつつある商店街を盛り上げようと企画する学生たちの「マチカツ」に参加することになる。
しかし。
怪訝な目でみる商店街の店主たち。
露骨に邪険にする人たちもいるなかで、彼らは何度も壁にぶつかり、もがき、しかし彼らの一生懸命な姿に支えてくれる人たちも徐々に増え、様々なアイデアを実現していく。
その姿は、とても地に足がついていて、何が大切なのか迷いながら探る姿にはとても共感がもてました。
そして。
その裏にある、マチカツとは違うもう一つのテーマ。
自分の居場所づくり。
これは、多くの大人にとって誰もが抱える共通のテーマなのではないでしょうか。
それに真っ向から取り組み、その真摯な姿勢に周りが次第に変わっていく様子。
その姿に何より心強さを感じたし、人の温かさを感じました。
文章もとても読みやすくて、お仕事小説は硬いのが多くてちょっと難しいな……と思っている方、特に現役大学生やこれから大学生になるであろう中高生、さらにとっくに大学生時代なんて過去のものになった大人も、お薦めできる作品です。
社会経験のない若い人に仕事を作らせるとどうしてもいろいろな不備が出てくるもので、選ぶ業種も教育や販売といった、見覚えのあるものに偏りがちになるのが普通かと思います。
市場を調べる、客層を決めるといった、企画に関わる会社員であれば誰もが思いつくようなアイデアも、大学生であればなかなかピンとこない。なので、そこをどう描いてくるかな、というのが今回期待していた大きなポイントでした。
働くヒトコンテストの他の作品はある程度までは仕事を知っていて、これからプロとしてどうやっていくか、を描くものが多いのですが、ズブの素人が一から仕事を作るのはこの作品以外あまりないのではと思います。
乙島さんの腕の見せ所だなあと思いました。
私の感想としては、スモールステップがとてもうまくできていたなという印象です。商店街の人と出会い、関係を作り、意見が衝突し、失敗する。人を集め、経験を積み、意外な驚きがあり、恋も芽生える。そうした細やかな変化を段階的に表現し、主人公の成長と職業に関する情報を織り交ぜるという描きかたが、テーマにあっていてとても良かったです。
それと、後半に登場する仮面の方、詳細は伏せますが、この役がとてもインパクトがあり、飽きさせない工夫も見事でした。
スポーツや勉強だけじゃない、初めて社会に立ち向かい、苦境をのりこえ成長する若者たちの姿が眩しいです。今回も良い作品を読ませていただきました。
古巣市のうずら通り商店街で地域活性化のボランティア活動をすることになった大学生、イサミンこと伊佐見渓くんが主人公のお話。
とても読みやすいです。
奮闘するイサミンたちを応援しているうちに、いつの間にか読み終わっていました。
決して薄っぺらい内容というわけではなく、人と人の関わりの大切さや、主人公を始めとしたキャラクターたちの成長など、きっちりぎっしり詰め込まれているのでご安心を。
大学生が廃れた商店街の復活に挑戦するわけですが、色々な問題にぶつかります。
その都度、迷って考えて、時には大人に頼りながら、彼ら彼女らは成長していきます。
キャラクターも素晴らしいです。
主人公のイサミン。最近の若者向け小説にありがち(?)な巻き込まれ型の男子大学生です。でもやるときはやるんです!
彼の活躍をぜひ見ていただきたい!
そりゃあもう感動すること間違いなし!
頼れる先輩の花笑さんや慶隆さん、オタクな後輩の理人くん。
みんないい子かよ!
私もこのサークル入りたい!
そして私の推しメン、美耶ちゃん!
かなり初期から好きだったのですが、まさかあんなことになるとは……。
ふふふふふふふふ。
商店街のみっちゃんや城山さん、居座り鴉のレイヴンさんなど、脇を固めるキャラクターも個性的で楽しいです。
ここまでこのレビューを読んだ人なら、私がどれだけこの作品を楽しめたかわかると思います。
というわけで、あなたもうずら通り商店街へ来ちゃいましょう!
これまで親の転勤のおかげで、ひとつの街に落ち着くことがなかった主人公・伊佐見渓(いさみけい)。
大学生となって一人暮らしを始めた街でも、きっと四年間のひとときを過ごすだけだと思っていた。
が、ひょんなことからマチカツ部に誘われた時から、彼の意識は変わり始める。
果たして渓とマチカツ部員たちはシャッター街の危機を救うことができるのか?
今、きっとこの瞬間にも日本中のあちこちの地方都市で頭を抱えているであろうシャッター街問題。
それを根本的に解決するには画期的なアイデアなどではなく、人と人との触れ合い、繋がりなんだということを、今作はこれまで親友らしい友人を作れず、住んでいる街にも愛着が持てなかった主人公を通して語られます。
そしてそれと同時に商売とは本来こういうものだということを教えられたような気がしました。
今の世の中、いくら外面では奇麗ごとを謳っても一番重要視されるのは会社の利益ではないかと思います。
今これが売れるから、これが流行っているから、お店を出す。
だけどそれは本当にその街の人たちに必要とされているのでしょうか?
渓たちはシャッター街を救うため、新たなお店を出そうとあれこれ考えます。その過程の中で彼らが気付いたもの。それは商売をする上で当たり前だったのに、最近ではなんだかすっかり忘れられている大切なものであるように感じられて、思わずハッとしました。
カクヨムの利用者には社会人の方も多くおられると思いますが、自分の仕事に何か虚しさを感じるという方は今作を一度目を通してみてください。大学生たちの青臭いけれども、だからこそ自分たちが仕事をしている中で忘れつつある何かを彼らの姿に見つけることが出来るかもしれません。