さぁ、人と人とが繋がる仕事をしよう

これまで親の転勤のおかげで、ひとつの街に落ち着くことがなかった主人公・伊佐見渓(いさみけい)。
大学生となって一人暮らしを始めた街でも、きっと四年間のひとときを過ごすだけだと思っていた。
が、ひょんなことからマチカツ部に誘われた時から、彼の意識は変わり始める。
果たして渓とマチカツ部員たちはシャッター街の危機を救うことができるのか?

今、きっとこの瞬間にも日本中のあちこちの地方都市で頭を抱えているであろうシャッター街問題。
それを根本的に解決するには画期的なアイデアなどではなく、人と人との触れ合い、繋がりなんだということを、今作はこれまで親友らしい友人を作れず、住んでいる街にも愛着が持てなかった主人公を通して語られます。

そしてそれと同時に商売とは本来こういうものだということを教えられたような気がしました。
今の世の中、いくら外面では奇麗ごとを謳っても一番重要視されるのは会社の利益ではないかと思います。
今これが売れるから、これが流行っているから、お店を出す。
だけどそれは本当にその街の人たちに必要とされているのでしょうか?
渓たちはシャッター街を救うため、新たなお店を出そうとあれこれ考えます。その過程の中で彼らが気付いたもの。それは商売をする上で当たり前だったのに、最近ではなんだかすっかり忘れられている大切なものであるように感じられて、思わずハッとしました。

カクヨムの利用者には社会人の方も多くおられると思いますが、自分の仕事に何か虚しさを感じるという方は今作を一度目を通してみてください。大学生たちの青臭いけれども、だからこそ自分たちが仕事をしている中で忘れつつある何かを彼らの姿に見つけることが出来るかもしれません。

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