概要
梅雨に出会った男女の、疲れた心を休める物語。
名前を知らない。彼はわたしを「金魚さん」と呼び、わたしは彼を「キリンさん」と呼ぶ。家出をしているというその人を、少しの間だけ泊めることにした。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!対立する二つの世界とその先
優れた作品を読んでいると、私は二つの世界に没頭してしまう。一つは目の前に提示された作品の世界、もう一つは私自身が思い描く空想の世界。読者でもあり作者でもある人ならば、提示された作品を読み進めることで様々なことを想起する、つまり刺激を受けるといったような経験はあるだろう。
そうして二つの世界を行き来するために、また、結末に向けて進む世界と離れることを惜しむために、自然と読書の速度は遅くなる。それが却って読書経験を濃密にさせるのだ。
先に、優れた作品と言った。では、優れたものとは何だろうか?
一つの基準となり得るのは、多くの人々が賛同し認めたものだということ。しかし、そこに一つの落とし穴がある…続きを読む