概要
少年とともに暮らす「おじさん」は、地下世界でただひとり本を読み仕事を持つ。少年が既に文字を読めることを知ったおじさんは、少年とともに世界の中心にそびえ立つ山羊女の宮殿へと向かう。
第二章 少年
少年は「ガキども」のリーダーである茶色い髪の若者に文字を教える。宮殿に行きたいと願う茶色。おじさんとの秘密である宮殿への道を教えられない少年。ひとりで宮殿に向かい消耗しきって帰ってきた茶色。少年はおじさんとの約束を破る。その時、ガキどものひとりが騒ぎを起こした。
第三章 山羊女
おじさんの元を去った少年は男たちを導く指導者となり、「炎」や「赤い堀」とともに地上の世界への帰還をめざしていた。新たに仲間となった「片手」は密かな野望を抱いている。少年の不在の間、炎と片手に扇動され
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!シンプルながら、これ以上のタイトルは無い
食糧難を解決したはずの未来。緩やかな衰退の中で穀物は枯れた。
そんな絶望的な世界で「山羊女」は生み出された。
セルロースを分解できる腸を持った女。
その遺伝子を受け継ぐ山羊男を生み出すために、地下施設は作られた。
やがて忘れられた地下施設の中で、完結された世界が生まれる。
なぜこの小説を手に取ってしまったのか、実際のところよくわかりません。
山羊女というパンチ力の強すぎるタイトルに惹かれたのかも。
しかし、すべて読み切ってしまうと、これ以上適切なタイトルはありませんでした。
これはSFの中でも、ポストアポカリプスフィクションに分類される話です。
ポストアポカリプスというと文明崩壊直後とい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ディストピアに文字を、名前を、音楽を。そして、ふさわしい結末を。
地上の世界は滅亡したという。
食糧が生産できなくなり、人口が減少して衰退した。
そんな末期の世界で科学的に産み出されたのが山羊女。
彼女の特殊な消化器官を次世代に後継させられるなら、
食糧問題に解決の希望が見える。遺伝子実験は続けられた。
地下の世界は原始へと回帰したかのようだ。
山羊女は地下世界で唯一の存在であり、宮殿に住んでいる。
宮殿の外には男だけがいて、居住区はランク分けされている。
強さを証明した優秀な男は山羊女との儀式を行う権利を持つ。
地下世界の男は儀式の意味もわからぬまま、山羊女を渇望する。
幼かった少年は、育て親であるおじさんから文字を学んだ。
おじさんに連れられて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「山羊女」をめぐる不思議な冒険
不思議な独特の世界観で、読んで行くうちに次々と謎が明かされていき読者を引き込む作品。
こういう崩壊した世界の謎を探るみたいな話は好きなので、忘れ去られた地下施設や地下通路のうす茶けた光景やそこで暮らす人々の様子が目に浮かぶようで、未知の世界を探検するそんなワクワク感や冒険心をくすぐられながら読みました。
文章もすごく雰囲気があり行間が凄く空いているという訳でもないのに読みやすいです。
静かに始まり静かに終わり、そして薄暗い空の中にほのかに希望の明かりがみえるようなそんな話。クオリティーの割には評価が低いと思うので、是非もっと多くの方に読んでもらいたいです。 - ★★★ Excellent!!!緻密な雰囲気小説
雰囲気小説というと中身のないその場の勢いに任せた小説のようだが、そういう意味で使っているわけではないことを最初に明言しておく。
実は僕はこの小説の面白さがよくわかっていない。かわいい女の子が出てくるわけでも、楽しい会話劇が繰り広げられるわけでもないが、一気に一章を読み進めた。先の展開が気になって仕方がないのだ。これはとても不思議な体験だ。各話の最後をみても特別読者を煽るような終わり方をしているわけではないのに、先を読みたいと思った。作者の丁寧な描写によるものだろうとほかのレビュアーが言及しているがそれだけではないと僕は思う。頭にちらつくのだ。”山羊女”という字面が。小説のあらすじを読むと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文字は、世界を解く鍵。地上は本当にあるのか。
世界が滅ぶ前に作られ、目的の忘れられた地下実験施設で生きる者たち。
宮殿の山羊女と、周囲に衛兵。居住区には男しかいない。
居住区の男たちの中で、おじさんは唯一本を読む。
字の読み方を覚えた少年を、おじさんは、図書館へ連れて行く。
本の中には、世界がある。
世界を解く鍵が、文字だ。
刹那的な生き方だが、それぞれに何かを渇望している男たち。
少年は文字を他の若者に教え、さらに他の者たちへ。
本を読み、道具の使い方を知り、いろいろ知れば、疑問を抱く。
地下の世界には、おかしな点がある。
地上は、どこにあるのか?
夕べ一気読みしてしまって、現在寝不足です。
面白かった。熱かった。 - ★★★ Excellent!!!寂寞とした地下世界で生きて
くー! これは面白かった。
本作は、不思議な地下空間(地下施設)を舞台に、文字を知るおじさんと、おじさんに文字を教わる少年、少年と心を通わす茶色などが交わりあい物語が進展していく。空間の中心には、濠で囲まれた高く聳える宮殿があり、居住区の男たちから隔絶している。そこにはセルロースを分解できる「山羊女」がいる。
まず目を引くのは、小説全体を貫く淡々とした語り口だ。作品世界をとりまく寂寥とした雰囲気を伝えるにもってこいの文体で、どんどんと小説の中に引き込まれていく。
小説で多くの描写を占める、地下施設の通路の描写がまた魅力的。おじさんや少年が普段暮らす表層世界とは次元が全く異なる通路の世界…続きを読む