概要
よるべなきふたりの、春にいたる物語。
時は明治三十一年。国内に荒れ狂っていた内戦の機運がすっかり息を潜め、帝国主義の嵐が吹き荒れる帝都東京に、東北の農村から一人の娘が売られてくる。
娘の名は、花。彼女は自らを買った女衒の元を逃げ出し、期せずして一人の男に出逢う。
男の名は、蛹。ひどく美しい姿形をしたその男は、帝都の貧民窟に身を寄せ、色を売る男娼だった。
娘の名は、花。彼女は自らを買った女衒の元を逃げ出し、期せずして一人の男に出逢う。
男の名は、蛹。ひどく美しい姿形をしたその男は、帝都の貧民窟に身を寄せ、色を売る男娼だった。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!花開くまえの小さな蕾と、羽化を拒んだ頑なな蛹のはなし。
口減らしのために東北の農村から売られた花。
己の身にふりかかった理不尽さを呪い女衒から逃げ出した花を偶然助けたのは、蛹と名乗る青年だった。
まさに恋を待つ蕾、のお話でした。
花は芯が強い女の子で、そんな花との出会いでなにもかもを諦めたように己を繭のなかへ閉じ込める蛹に変化が訪れる。
東京へと名を改めたばかりの地を舞台に、その華やかそうな雰囲気を取り込みつつもうつくしいだけではないと言うように泥臭さを残していて、それがまた花と蛹にはぴったりでした。
蕾を見つけた蛹が、そのかたくやわらかな繭をこわして羽ばたつ。
蕾がほころんで花ひらき。
蛹がその殻を打ち破って蝶となれば。
最後に訪れた…続きを読む