花開くまえの小さな蕾と、羽化を拒んだ頑なな蛹のはなし。

口減らしのために東北の農村から売られた花。
己の身にふりかかった理不尽さを呪い女衒から逃げ出した花を偶然助けたのは、蛹と名乗る青年だった。

まさに恋を待つ蕾、のお話でした。

花は芯が強い女の子で、そんな花との出会いでなにもかもを諦めたように己を繭のなかへ閉じ込める蛹に変化が訪れる。
東京へと名を改めたばかりの地を舞台に、その華やかそうな雰囲気を取り込みつつもうつくしいだけではないと言うように泥臭さを残していて、それがまた花と蛹にはぴったりでした。


蕾を見つけた蛹が、そのかたくやわらかな繭をこわして羽ばたつ。
蕾がほころんで花ひらき。
蛹がその殻を打ち破って蝶となれば。

最後に訪れた光景は、ごくごく当たり前のような奇跡なのだと、私には思えました。

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