大正二十五年、帝都に漂うは蒸気と煙、そしてアヤカシの気配。

 身長が高くものぐさでも面倒見のよい記者、裏島正雄。
 彼の事務所に入り浸る、よく言えば快活、悪く言えば計算高い押しかけ助手の女学生薮内あおい。作中の語り部として主だって彼女の視点で話は進みます。
 二人のところに飛び込んでくる依頼はアヤカシ絡み。
 来歴の旧い猫又や雷獣など、和モノになじみがない方も見覚えがあるはず。

 舞台は電機ではなく蒸気機関が発達した大正二十五年の帝都。
 レトロフューチャーの代名詞ともいえるスチームパンクとアヤカシの混交によって懐かしくも新しい独自世界を構築しています。
 裏島と憲兵犬村。それに手伝いの酒口一助。妖しい美少女シュテンとの掛け合いも楽しいレトロモダンなミステリ作品。

 本編を読み終えた方、一話二分ほどで読めるSS集もどうぞ。

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