昨日この作品を読んだときは「んなバカな……」と半笑いだった私ですが、ひと晩たった今朝。シャワーを浴びていると突然、ゾワゾワゾワと背中に感じるものがありまして、なんだか浴室の隅のカビが妙に気になりだしてしまったんですね。
幻聴のように粘っこい声で「湿気ちゃうともうダメだよね~。なんで湿気させちゃったの?」なんて聞こえてくるし。いやお風呂だから湿気もクソもないんだけど、なんかもう一回気になりだしたら怖くて怖くて仕方なくなりまして。
強迫観念にかられたように手袋とゴーグルとマスクを用意して、カビキラーで掃除なんかしたりしはじめちゃって。
でも掃除しても掃除してもカビが私を嘲笑っているようで。
「湿気ちゃうともうダメだよね~。なんで湿気させちゃったの?」なんて粘っこい声で。
もうほんとに怖くなっちゃって。
ひと晩たったときにこの作品の真の恐怖があると思います。
これから読もうとしている人はカビに心をとらわれないように気をつけてくださいね……。
主人公は期せずして両親を失い、代わりに多額の保険金を手に入れる。それがすべての始まりだった。
棲みやすいはずの家は時折りきしむような音を立てて、和室の畳にはかびが広がる。
業を煮やした主人公は無知を承知で畳業者に交換を依頼。快諾してもらえたものの、何故か畳業者は一向に来ない。
やっと来てもらえたものの、その畳業者は――――
淡々と紡がれる、孤独な日常。そしてその日常を浸食していくかびと不意に訪れる描写が目を引きます。
果たして主人公は、両親からの目に見えない遺産を武器に、迫りくる脅威を打ち払えるか。作者渾身のホラー短編。
(……作品内容が内容だから、どうやったって当たり障りないレビューしか書けないよな…………(-_-).。o○0〇