新人賞、高次落選作。人間VS動物の面白おかしい法廷バトル!

中世ヨーロッパで実際に繰り広げられた『動物裁判』を題材にした小説です。
人間に危害を加えた獣害に対しても、一方的に駆除するのではなく大真面目に裁判を開くという、嘘のようで本当にあった出来事。
犬やネズミを法廷に立たせ、原告と弁護士が喧々諤々の論戦を始めるという、シュールな展開がめちゃくちゃ面白いです。

また、舞台背景の説得力も秀逸です。
花の都パリとは名ばかりの、不衛生だった町並みや世俗が克明に書き込まれ、作者様の丹念な取材力が冴え渡ります。
そんな町だからこそ動物が跋扈し、人間とトラブルを起こしやすい……という下地があるわけです。

連作短編という形式で、2つの裁判を扱っていますが、主人公の動物弁護士と助手はまだまだ健在。
今後いくらでも続編を書くことが出来るでしょう。

某社の新人賞で惜しくも三次選考落選(最終選考手前!)という結果が悔やまれます。

この作者様は他にも、最終選考候補まで残った力作も擁しており、そこら辺のアマチュアとは比べ物にならない確かな実力を持っています。
このような書き手が脚光を浴び、羽ばたいてくれることを切に願います。

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